皆で遊ぶ

「さてさて、今日は皆でボーリングをしたいと思います」


 骨折も完治して右手で色々とするのにも慣れた六月の下旬、健斗は学校終わりに雪奈、ひよりと共に夏奈にボーリング場まで連れて来られた。

 駅前にあるからか結構人気のあるボーリング場らしく、学校終わりの学生や平日が休み社会人などで賑わっている。


「ボーリングってボール投げる時に雪奈から離れないといけない地獄のスポーツか?」

「そりゃイチャつきながらボール投げる人なんていませんからね。にしても地獄のスポーツって……」


 いつもくっついているので、雪奈と離れないといけないのは健斗にとって地獄の時間だ。

 白い目を夏奈に向けられたが、健斗はギューって雪奈に抱きつく。


「ボーリングじゃなくてカラオケが良かった」

「いや、カラオケだったらもっと凄いことになるじゃないですか」


 カラオケは個室だからどこまでもイチャつけることが出来るので、遊ぶにはもってこいの場所だ。

 だけど夏奈にはお気に召さないらしく、「はあ……」とため息をつかれた。

 以前はイチャイチャしているとこを見たい、と言っていたのだが、流石に濃厚なイチャイチャを見せられて気が滅入ったのだろう。


「夏奈、健斗くんがカラオケに行きたいならカラオケにすべきだよ」

「いや、もう受付済ましているから無理だよ」


 確かにもうレーンに案内されたし、既にボーリング用のシューズに履き替えている。

 今さら健斗や雪奈が言ったところでボーリングを中止することなど出来ないだろう。


「カラオケはこの後二人で行ってね」


 行きたいならボーリングが終わった後か後日しかない。


「私は雪奈と遊べて嬉しいけどね。最近は長瀬くんに雪奈を取られっぱなしだし」


 ひよりが嬉しそうな笑みを雪奈に向ける。

 親友を彼氏に取られて寂しいのだろう。


「そうか。俺がくっついてくるけどな」


 これからは雪奈と遊ぶには健斗もオプションで付いてくる。


「そうみたいだね。教室でもずっとイチャイチャしてるから、二人がくっついていないと変な感じがするかも」


 苦笑いしつつも、ひよりは健斗と雪奈が一緒にいることが当たり前だと思いつつあるようだ。


「じゃあ、ボーリングを楽しみますか」


 ブラウスの袖を捲ったひよりに、皆か「おー」と言ってボーリングを開始した。


☆ ☆ ☆


「また、負けた……」


 ボーリングが終わった後、皆で喫茶店に入ってお茶を飲んでいる。

 ガムシロ入りのアイスコーヒーを飲みながら健斗は不満を露にして呟いた。


「お兄さんって弱いですね」


 白い目で見ている夏奈が呟く。

 ボーリングの結果は一位に夏奈、二位がひより、三位が雪奈で最下位は健斗だった。

 ことごとくガーターを連発し、三十という自らの最低スコアを更新してしまったほどだ。

 くっつくながら投げる時に周りからの視線が凄かったが、健斗は全く気にしていなかった。


「長瀬くん、ボール投げる時も雪奈とくっついてるんだもん。ガーターになるのはしょうがないよね」


 ひよりもこちらに白い目を向けており、どんな時でも絶対に雪奈から離れない健斗に呆れているようだ。


「そのくせ、お姉ちゃんが投げる時にはしっかりと離れてましたけどね」

「だって雪奈にガーターを取らすわけにはいかないだろ」


 イチャイチャしたいのは健斗のエゴなので、雪奈のスコアに影響させるわけにはいかない。

 だから我慢して雪奈が投げる時は離れたのだ。


「私は健斗くんがくっついたままでも良かったですよ」


 コテン、と隣に座っている雪奈が手を繋ぎながら健斗の肩に頭を乗せてきた。

 何においても健斗を優先する雪奈にとって、ボーリングのスコアよりくっついている方がいいらしい。


「そうか。次からはそうしよう」

「はい」


 本当に可愛く、健斗は雪奈の頭を撫でる。

 もっともっとくっついていたい気持ちになってしまい、雪奈とセフレになってからいかに彼女から離れないようにするか、ということばかり考えてしまう。


「私はここまでのバカップルは見たことがないよ……」

「私もです……」

「夏奈ちゃんも彼氏が出来たらああなるんじゃない?」

「流石に勘弁願いたいですね……」


 イチャついている健斗と雪奈を見て、呆れたいうな視線を向ける二人だった。

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