カラオケで交互に膝枕

「制服が出来上がるまで一週間か……」


 学校が終わった後に制服の購入のために健斗は雪奈を連れて店に行ったが、やはり当日中に受け取ることが出来なかった。

 サイズを計って今日は終わりだ。


「せっかく駅前に来たし、どこか遊びに行くか?」


 先日までずっと病院にいたので、どこか行きたい気持ちでいっぱいである。

 このまま帰って雪奈とイチャイチャでもいいのだが、夜にいっぱい出来るし急いで帰る必要はない。


「いいんですか?」

「ああ。デートだな」


 セフレだからってデートに行ってはいけない決まりはないので、普通に恋人同士がするのとだってしてもいいはずだ。

 今まで彼女がいたことない健斗にデートスポットがわかるわけもなく、こめかみに指を当ててどこに行くか考える。

 手を繋いでいる方の手をこめかみに当てたため、雪奈の手も自動的にくっついてきたが。


「健斗くんとデート……」


 デート、という言葉に反応し、雪奈の口元が緩んだのは、エッチなことだけじゃないとわかったからだろう。

 病室で痛いと感じてしまうくらいに抱き締めてしまったが、基本的には大事にしたいと思っている。

 周りからは砂糖を口に入れられたんじゃないかと思うくらいにイチャイチャもしるし、雪奈を独占出来るなら人前でキスだってするだろう。

 セフレを独占するのはおかしな話でもない。

 雪奈が他の人とした後に自分がする気が起きないからだ。


「久しぶりにゲーセン……いや、カラオケかな」

「じゃあカラオケに行きましょう」


 雪奈に連れられてカラオケに向かった。


☆ ☆ ☆


「カラオケは久しぶりだな。ゴールデンウィークに行くつもりでいたけど」


 フリータイム(三時間以上いればフリータイムが得になる)にドリンクバーがカラオケに入店。


「ごめんなさい。私のせいで……」


 車に轢かれてしまったために健斗の予定を潰れてしまい、雪奈の顔が曇る。

 確かに車に轢かれて入院しなかったら友達と行くつもりでいた。


「気にするな。今はこうして雪奈と来れたし」

「あ……はい」


 優しく引き寄せてから雪奈の頭を撫でる。

 先日は病室で少し乱暴にされて喜んでいた雪奈であるが、こうやって優しくされるのも好きなようだ。

 普通だったら優しくされた方が好きな人は多いだろう。


「雪奈はどんな曲を歌うの?」


 そういえばあまり趣味とか知らないな、と思い、雪奈に尋ねた。

 何となくクラシックを聞く雪奈を想像してしまったが、今の女子高生が一つのジャンルだけ聞く、というのは少ないかもしれない。

 だけどクラシックを聞きながら読書をしている雪奈がイメージ出来てしまったのだ。


「流行りの曲は知っているので歌いますよ」

「そうか。俺はアニソンが多いな」


 マニアックなのはわからないが、深夜アニメでやっているオープニングとエンディングの曲は聞くようにしている。

 レコーダーに録画されているアニメの曲を聞いて、良かったと思ったのをスマホにダウンロードするのだが。


「なら私もアニソンを聞かなくてはいけませんね。また健斗くんとカラオケに行くことはあるでしょうし」


 ヤンデレだけあって、雪奈は健斗の聞いている曲を知りたいようだ。


「別に自分の好きな曲を聞けばいいと思うけど」

「たった今、健斗くんの好きな曲が私の好きな曲になりました」


 少し無理がある気がするが、雪奈にとっては健斗が全て、ということ。


「そうか。とりあえず歌うか」

「はい」


 デンモクを手に取って曲を選ぶ。

 雪奈がいるから誰もが知っているアニソンにしようかと思ったが、彼女の知らない曲を選んで欲しそうだったので止めた。


「健斗くんが歌っている時はこうします」


 座っている健斗の太ももに、雪奈は「えへへ」と笑みを浮かべて自分の頭を乗せてくる。

 いわゆる膝枕というやつで、恋人同士がやる定番な膝枕をしたかったようだ。

 太ももを触れられるなんてなかったために少し違和感があるが、雪奈が嬉しそうにしているので止めて、と言わない。


 適当なアニソンを歌い、次は雪奈の番だ。


「俺も膝枕」


 雪奈がデンモクを使って曲を選んでいる間に、健斗は彼女の太ももに頭を乗せる。

 細い太ももには弾力があり、普段使っている枕より快適だ。

 ずっとしていたい気持ちになるが、雪奈の足が限界を向かえるので長時間は出来ない。

 今日のカラオケは交互に膝枕をすることになるだろう。


「タイツ脱いでくれない? 生足の膝枕がいい」

「はい」


 何でも言うことを聞いてくれるため、雪奈はタイツを脱いだ。

 部屋を暗くしているので良く見えないが、今の雪奈は顔が赤いだろう。

 生足になった太ももに頭を乗せ、再び膝枕を味わうことにした。

 スカートが邪魔なのでギリギリまで捲り上げると、「あうー……」と恥ずかしそうな声が聞こえる。

 いくら昨日体を交えたといっても恥ずかしいのだろう。

 今は膝枕を堪能したいのであって下着を見たいわけではないため、これ以上スカートを捲ることはしない。


「雪奈の歌声はどんなかな?」

「う、上手くはないですよ」


 実際に聞いたことあるわけではないので分からないが、上手くないと言っている人ほど上手だったりする。

 特に雪奈は謙遜するタイプなので、実は上手い可能性は充分に考えられるのだ。


「そんな期待されたような目で見つめられても困ります」


 異性とカラオケに行くのは初めてのため、雪奈の歌を聞けるのはかなり楽しみだったりする。


「早く」

「ううー……ガッカリしないでくださいね」


 雪奈は曲を選んで歌い始めた。


「上手い」


 素直な感想で、透き通るような歌声に健斗は瞼を閉じて聞き入る。

 雪奈が歌い終わったら健斗が歌い、膝枕も交互にした。

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