拘束しながら

「本当にキミたちは何でついてくるの?」


 学校から帰って来た健斗であるが、何故か夏奈とひよりがついてきた。

 ここ最近は行動を共にすることが多いとはいえ、家にはあまり来てほしくない。

 イチャイチャもとい、エロエロする時間が少なくなってしまうのだから。


「もうすぐテストあるから一緒に勉強しようかと」

「ですです」


 ひよりの答えに夏奈が頷く。

 確かに二日後には期末テストが始まるので勉強は必要だろうが、だからってこの家でする必要はない。

 むしろ空気を読んで自分の家でしてほしい、と健斗は切に思う。


「勉強は一人でやったあ方がいいんじゃないか?」


 健斗が雪奈と一緒に勉強すると確実にイチャイチャする自信がある。


「逆だよ。私は一人だとスマホ弄ったりしちゃうから」

「私もです」


 どうやら人によっては一人の方が集中出来ないらしい。

 中間テストはどうしたか分からないが、夏奈とひよりは誰かと一緒の方が勉強に集中出来るようだ。


「付き合ってもいない男の家にホイホイ来るのはどうかと思うけどな」


 何度も来ては襲われても文句は言えない。

 雪奈以外の人とするつもりはないが、忠告のために言っておく。


「長瀬くんは雪奈しか見ないから問題ないでしょ」

「はい。むしろお姉ちゃん以外の人に手を出したら私が許しません」


 ずっと雪奈とイチャイチャしていたため、他の人に手を出すことがないと信用はされているらしい。

 確かに今は雪奈以外の異性に興味を持てないので、信用してくれて大丈夫だ。


「健斗くんは、私だけじゃ、満足出来ませんか?」


 うっすらと瞳に涙を浮かべた雪奈に抱き締められる。

 セフレの関係だから浮気するなと言えない雪奈にとって、健斗が他の人に手を出されるのは嫌なことだろう。


「大丈夫。雪奈以外の人には手を出さないから」


 優しく頭を撫でながら言う。


「本当ですか?」

「本当だよ。俺は雪奈と一緒にいたいから」


 思っていることを素直に耳元で囁いてあげると、雪奈は頬を染めて「あう……」と甘い声を出した。

 ドMだから囁かれると快感になってしまうのだろう。

 強く抱き締め、絶対に離さないという想いを込める。


「やっぱりバカップル……」

「ですねー。本当にどうやってあのお姉ちゃんをここまでにしたのやら」


 異性に近づこうとしいなかった雪奈を、どうしたらあそこまで蕩けさすことが出来たか夏奈は気になるのだろう。

 確かに車に轢かれそうになったとこを助けられたからといっても、ここまで雪奈がベタ惚れになるのは思っていなかった。

 今まで恋愛をしたことがなかったから人を好きになって想いが溢れてしまっているとも考えてられるが。


「俺が他の人に手を出さないという証拠を示そう」


 どうしてこんなにベタ惚れなのか気になるが、今は雪奈一筋というのを証明しなければならない。

 他の人に手を出す気はないと雪奈に安心させるのが一番だ。


「どうするのですか?」

「ちょっと待ってて」


 健斗は寝室に行き、とある物を持ってくる。


「これは……」


 雪奈の頬が真っ赤に染まり、こちらを見ることも出来ないようだ。

 二人きりの時なら大丈夫だろうが、今は他に人がいるから恥ずかしくなっても仕方ない。


「以前使った拘束具」


 人の手足を拘束して動けなくする道具だ。


「二人とも、ちょっと手伝って」

「え? どうするの?」


 まさか拘束具を持っているとは思っていなかったようで、夏奈とひよりの目が点になっている。

 だけどこれからすることは二人に手伝ってもらわないとどうしようもない。


「まず雪奈が俺の上に乗ります」


 頷いた雪奈は、座っている健斗の太ももに乗る。

 いわゆる対面座位の体勢で、最近はこの体位がお気に入りだ。

 密着度が高いために、雪奈の全てを感じられる気がするから。


「雪奈は俺の背中に手足を回して、二人は雪奈の手足に拘束具を付けて。そうすればずっと一緒」


 夏奈に拘束具を渡す。

 ただ、唖然としているよで、手に持っても拘束具を付けようとしない。

 恐らくは拘束具なんて見るのは初めてだろう。


「夏奈、早く付けて」

「あ、うん」


 ようやく反応した夏奈が拘束具を雪奈の手足につけようとする。

 革製だからカチャカチャ、という音はしないが、何とか付けてくれているようだ。


「思わず付けたけど、正直私はお兄さんにドン引きしてます……」

「私も……」


 対面座位の体勢で雪奈を拘束しているのだし、ドン引きしても仕方ない。

 だけど雪奈に他の人も元に行かないという証明をするためだし、ある程度しょうがないだろう。


「しばらくこの体勢で俺の全てを感じてくれ」

「はい」


 制服姿の雪奈は、拘束されたまま健斗の全てを味わうかのように強く抱きついてくる。

 対面座位の体勢という、本来であれば他の人がいてすることではないが、雪奈は健斗が他の人に手を出さない証明のためにやってくれたと思っていそうなくらいに嬉しい笑みを浮かべている。


「こんなんで勉強集中出来るかな」

「あははは……暴走バカップルがいると難しいかもしれないですね」


 苦笑いする夏奈とひよりだった。

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