クラスメイトはコーヒー必須
「だいぶ良くなってきたかな」
テスト前日、健斗は休み時間にも字の練習をしていた。
結構練習したからか字を読める程度まで書けるようになったため、椅子に座りながら健斗は背中を伸ばす。
正直、休み時間を使ってまで字を書く練習をしなければいけないのは面倒であったが、テストで赤点を取らないためにはしょうがない。
頑張ったおかげて、今回のテストは赤点を取ることはないだろう。
だからって今までも赤点を取ったことがあるわけではない。
「健斗くんは努力家ですね」
ニコっと笑みを浮かべて雪奈はこちらを見る。
この笑顔を見れると思えば、勉強など苦にはならない。
「ありがとう」
隣に座っている雪奈の頭を撫でる。
雪奈いたからこそ左手でも字が書けるようになったのだし、テストが終わったらお礼をしなくてはならない。
「健斗くんに撫でられるの好き、です」
頬を赤らめながら上目遣いで見つめてくる雪奈はとても可愛く、思わずキスしそうになってしまう。
だけど教室でキスするわけにはいかず、健斗はぐっと我慢する。
「……二人とも凄いね」
ふいに後ろから声が聞こえたため、健斗は振り替える。
すると少し呆れたような顔をして立っている女子生徒がいた。
「何が凄いんだ?」
健斗はクラスメイトである彼女──
長めの栗色の髪、ライトブラウンの大きな瞳は、雪奈と引けを取らないくらいの美少女だ。
事故に遭っても雪奈以外のことはほぼほぼ覚えているので、クラスメイトの名前は分かる。
「いや、学校でこんなにもイチャつけるなんて凄いなって」
「彼女とイチャイチャしたいと思うのは普通のことだろ」
何でそんなことを言われないといけないんだ? と思い、健斗は頭の中にはてなマークが浮かぶ。
彼女、と言われて嬉しいのか、雪奈は「えへへ」と頬を赤く染めて笑みを浮かべている。
「二人きりだったらイチャイチャするだろうけど、教室でするから凄いと思ったの。ゴールデンウィーク明けからブラックコーヒーを飲む人増えたからね」
「おお、確かに」
周りを見てみると、男女問わずコーヒーを飲んでいる人が多い。
「いつの間にコーヒー好きな人が増えたの?」
記憶が確かであれば、ブラックコーヒーを飲む人は少なかったはずだ。
全くいないわけではないが、喫茶店でもないのにこんなにもコーヒーを飲んでいる人たちがいる空間を初めて見た。
半数以上の人たちがブラックコーヒーを飲んでいるだろう。
「長瀬くんは天然なの? バカップルが教室でイチャイチャするから皆コーヒーを飲みたくなったんだよ」
「俺たちはバカップルではないな。付き合っているのは確かだけど」
実際にセフレの関係であるが、周りには付き合っていると言っておく。
「いや、二人を見たら百人中百人がバカップルと言うと思うよ……」
ため息の混じりの声で言われた理由が分からないため、健斗の頭にはてなマークが浮かぶ。
確かにイチャイチャしてるつもりでいるが、別にバカップルだと健斗は思っていない。
他の男が雪奈に寄ってこないように見せつけているだけだ。
「雪奈ってかなりモテるでしょ?」
「そうだね。中学の頃から一緒だけど、雪奈はそうとうモテていたよ」
どうやらひよりと雪奈は中学からに知り合いらしい。
名前で呼んでいるので、恐らくは一緒に遊びに行ったこともある仲だろう。
ゴールデンウィークから健斗が雪奈を独占してしまっているため、最近は遊んでいないだろうが。
「モテ過ぎて男の人一緒にいるのが嫌だと言っていた雪奈がこうもイチャイチャするなんて……恋をすると人って変わるんだね」
「ひよりちゃん、何を言っているんですか?」
ずっと傍聴をお決め込んでいたであろう雪奈が、頬を赤らめて話に入ってきた。
本来はセフレ関係のため、もしかしたらあまり重いと健斗に思われたくないのかもしれない。
健斗としては愛が重い方が雪奈が他の男のとこに行く心配がないためにいいのだが、彼女としいては重いと思われて捨てられる心配をしているようだ。
彼氏彼女のように接していてもあくまでもセフレの関係……雪奈してはセフレでいることが唯一健斗と繋がっていれるのだから。
「雪奈」
「え? きゃ……」
心配そうにしている雪奈を、健斗は自分の膝の上に座らせる。
雪奈の柔らかい感触が伝わってきて、このまま授業を受けたいくだいだ。
流石に先生に注意されるから授業中にはしないが。
「ずっと一緒」
「はい」
一緒にいたいと言った健斗に答えるかのように、雪奈は自分の手を最愛の人の手に重ねる。
「あー私もコーヒー飲もうかな」
ひよりも既に買ってきたコーヒーを飲み出す。
本当にコーヒー飲む人が増えたなって思い、健斗は先生が来るまで雪奈とイチャイチャしていた。
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