妹登場
「私は
テストが終わって最初の休日、健斗はいつも通り雪奈とイチャイチャしていたら、一人の少女が家に訪ねてきた。
腰まで伸びているダークグレーのサラサラとした髪、長いまつ毛に縁取られた大きな瞳は左右で色が違う金目銀目、透けるような白い肌は雪奈以上に現実離れした容姿だ。
確か彼女みたいな容姿の人は、比較的血縁関係が近いいとこ婚などをしたことある家系であれば希に産まれてくるらしい。
恐らく父親がいとこ婚したことある家系なのだろう。
「夏奈? どうしたの?」
姉に来ることを言っていなかったらしく、妹の登場に雪奈は驚いている。
「お姉ちゃんがどんな人と付き合っているのか気になって来ちゃった」
てへ、と夏奈は可愛らしい笑みを浮かべる。
そういえば一年に人形みたいな可愛い子がいる、とクラスメイトが言っていたので、恐らくは夏奈のことだろう。
一つ下の一年生らしく、雪奈と一緒に歩いていたら美人姉妹と言われそうだ。
「お兄さん、上がってもいいですか?」
「え? うん。てかお兄さん?」
「お姉ちゃんの彼氏だからお兄さんです」
靴を脱いだ夏奈は、てくてくとリビングの方へ向かっていく。
性格は雪奈と違うようで、どちらかと言うと母親である春奈に似ているようにも思える。
「うわあ……凄い匂いですね。休日とはいえ、朝から盛ってるの?」
ニヤニヤと笑みを浮かべた夏奈は、とちらを見て雪奈に問いかけた。
確かに朝ご飯を食べた後に雪奈としたために匂いが籠っているのかもしれない。
だけど自分の匂いというのは気づかないもので、籠っているとは思ってもいなかった。
「それはその……健斗くんが望むことは何でもしたいから……」
病院では春奈に言われて恥ずかしそうにしていた雪奈だが、健斗に抱かれて少しは慣れたようだ。
それでも頬が赤くなってはいるが。
相当匂っているようなので、健斗はリビングの窓を全開にする。
まだ十時過ぎでも気温が高くなってきているため、窓を開けても寒くはないだろう。
「あのお姉ちゃんがここまでなるなんて……本当にお兄さんは凄いですね」
「雪奈って男嫌いだったの?」
記憶がない健斗には、事故以降の雪奈しか分からない。
告白され過ぎて男子と一緒にいるのが嫌だ、とひよりが言っていたため、男が嫌いな可能性はある。
「嫌いってわけではないでしょうけど、告白され過ぎて近づきなくなかったようですよ」
モテるが故の悩みだろう。
女性からしたら男から言い寄られるのは嫌ということだ。
雪奈が言い寄られて嬉しいと思う男子は健斗だけだろう。
「お兄さん、お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございます」
ふと真面目な顔をした夏奈は頭を下げる。
家族が怪我をするのは誰でも嫌だろうし、助けた健斗に感謝してもしきれないらしい。
健斗には家族を失う辛さは良く分かっており、恐らくは仲良くない人でも助けたいと無意識の内に思って助けたのだろう。
「大丈夫。おかげで雪奈と一緒にいれるという大きな特権を手にしたから」
「そのようですね。家でもお兄さんの話ばっかでしたし、今でも手を繋いでいて仲がいいみたいですしね」
春奈と同じようなことを言ってくる夏奈はやはり親子だ。
一度春奈に言われてはいても恥ずかしさはあるようで、雪奈の頬は赤い。
「お兄さんはお姉ちゃんのことを大切にしているようで良かったです。体目的ならぶん殴っていました」
怖いことを言われ、健斗はドキってした。
大事にしていることに間違いはないが、実際にはセフレの関係だからだ。
「まあ、独占欲は強いみたいですが……」
雪奈に付けられているチョーカーに夏奈の視線が向かっていく。
普段は付けていないチョーカーを見たら、誰だって独占されていると思うだろう。
「雪奈が俺の女だからな」
絶対に誰にも渡したくないからこそ、健斗は雪奈にチョーカーを付けたのだ。
何でこうまでして独占したくなるのかはっきりとした理由は分からないが、絶対に手元に置いておきたい。
「えへへ。健斗くんの側にずっといますよ」
ギュッと雪奈は健斗に抱きついてくる。
「うわー、まだ五月なのに暑いなー」
くっついている健斗たちを見て、夏奈はそう呟くのだった。
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