美人姉妹と一緒にゲーム
『一緒にゲームしましょー』
夏奈にそう言われ、健斗たちはゲームをやることにした。
最近出た桃次郎電鉄で、買ったはいいがあまりやっていなかったゲーム。
プレイヤーが社長となってサイコロを回してマスを進んでいき、最後にどれだけお金を持っているかで勝ち負けが決まる。
お金は目的地まで最初に着く、青いマスに止まる、カードを使って相手から奪ったりするなどで手に入り、色々と戦略性があるのだ。
ちなみに二時間ほどで終わる五年で勝負。
「私からだね」
夏奈はコントローラーのAボタンを押してサイコロを回す。
「やった。五だ」
五マス進んだ夏奈の電車は、黄色いマスに止まった。
黄色いマスはプレイヤーにとって有利や不利になるカードがランダムで手に入る。
ルーレットが回ってAボタンを押した夏奈が手に入れたカードは特急周遊カードで、サイコロが三つになって、しかも何回か使えるカードだ。
「いきなりツイてるぅ」
確かに最初から特急周遊カードが手に入るのは強い。
相手に差をつけるチャンスなのだから。
「てか最初が博多って遠いな」
最初は東京駅からスタートしてランダムで決まる駅まで向かう必要があり、カードが少ない序盤に福岡にある博多まで行くのには時間がかかるだろう。
一ターンに一ヶ月かかるため、下手をすると一年近くかかる可能性もある。
「そうですね。私はゲーム中でもイチャイチャしてる二人もどうかと思いますけど」
若干白い目で夏奈はこちらを見る。
健斗は雪奈を膝の上に座らせており、彼女は恥ずかしがりながらコントローラーを持っているのだ。
「イチャイチャしたいし」
「私は健斗くんがしたいなら答えるだけです」
思春期男子はイチャイチャ出来る女の子がいればしてしまうもの。
「本当にバカップル……」
まるでここまでのバカップルは見たことがない、そんな瞳で見つめられた。
「次は俺だな」
健斗はAボタンを押してサイコロを回す。
「いち……」
一マス進んで何もなく終わる。
駅のマスに止まれば物件を買うことが出来るのだが、初期資金の一千万では都会の物件を買うのが難しい。
いや、買えなくはないが、物件を購入すると持ち金がゼロになるし、利益率を考えると買わない方がいいだろう。
「つ、次は私ですね」
未だに頬を赤くしている雪奈がサイコロを回す。
「や、やった。六です」
「あ、ピンクの矢印に進んで行けば最短距離だから」
雪奈はゲームをほとんどやらないということなので、健斗がルールの説明をしていく。
はい、と頷いた雪奈はコントローラーで電車を動かす。
「あ、青いマスです」
青いマスはランダムで貰えるお金が決まり、八月に近づく度につれて貰えるお金が増える。
雪奈が貰ったお金は四百万……春ならこんなものだろう。
「ねえ、俺の電車に貧乏神ついてる?」
「ついてないですね」
健斗の問いに夏奈が答える。
五ターンほどたったのだが、健斗がサイコロを回すと一か二しか出ない。
貧乏神はプレイヤーを不幸にさせ、プレイヤーが目的地に着いた時に最も遠いプレイヤーにつく。
まだ誰も目的地についていないため、本来であれば貧乏神がつくはずがない。
でも、健斗は貧乏神がついているんじゃないかと思われるくらいにサイコロの目が悪いのだ。
「のおぉぉぉ、
希にあるイベント……スリの銀一によって、健斗が持っているお金を全て取られてしまった。
まだ一年目だというのに起こるのは珍しいだろう。
「ひゃん……」
足を動かしてしまったので、膝の上に座っている雪奈の敏感な部分に当たってしまったらしい。
「お兄さん、ゲーム中にエッチなことしないでくださいよ」
夏奈は白い目でこちらを見る。
今のは意図してやったことではないため、言わないでほしい。
人がいる時に甘い声を出してしまったので、雪奈は「あう……」と恥ずかしそうにしている。
「わざとじゃない」
「本当ですか? お姉ちゃんが座っているから興奮しちゃったのでは?」
確かに雪奈にはいっぱい興奮するが、人前でしようとは思わない。
「健斗くん、したくなったらいつでも言ってください。そうしたら夏奈には帰っもらいますから」
くるりとこちらを向いた雪奈が言ってくる。
頬を赤らめながらそんなことを言われたらしたくなってしまうが、今は本当にしたいと思っていない。
「ゲームが始まったばかりなんだからそれは酷いよ」
雪奈にとっては家族よりセフレなのだろう。
せっかく来てくれた夏奈を追い返すことはしたくないので、健斗は「大丈夫」と言ってゲームを続けることにした。
☆ ☆ ☆
「ま、負けた……」
ゲームの結果、健斗はコンピューターにも叶わないくらいボロ負けした。
貧乏神が終始ついているし、途中でボンビーキングになってお金はマイナス、カードは全て捨てられた挙げ句、指定された駅にいかないと消えない、……に行けカードで枠が埋まって何も出来なかったのだ。
「お兄さんってゲーム弱かったんですね」
哀れむような目で、夏奈はこちらを見る。
そんな目で見ないで、と言いたいとこだが、まさにその通りなので何も言えない。
いや、夏奈のゲーム運が強すぎるのもあるだろう。
特急周遊を使い切った後に絶好調になってサイコロは三つになるし、カードも強力なのを沢山引いていた。
「スマホのゲームのガチャとか引き弱そうですね。現実ではSSRでるお姉ちゃんをゲット出来たというのに」
「それを言うな」
確かに美少女である雪奈をセフレに出来たため、現実では運がいいかもしれない。
だけど雪奈に運を使い過ぎたのか、他に運が振られなくなってしまったようだ。
「たまにはゲームもいいものですね。楽しめました」
雪奈は可もなく不可もなくといった感じで、コンピューターと接戦だった。
普段やらないゲームをやって楽しめたのだろう。
「お腹空いてきたな」
時計を確認するともう十三時近くになっているので、お腹が鳴ってしまいそうだ。
「昨日のカレーがあるので、温めてきますね」
「よろしく」
雪奈はキッチンに向かっていく。
「夏奈も食べる?」
「はい。せっかくなのでいただきます」
昼ご飯は三人で食べてのんびりと休日を過ごした。
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