病室でイチャイチャ
「んん、んちゅ……」
退院する前日の夕方、ベッドに座りながら健斗は雪奈とキスをしていた。
先ほど病院内の売店で飲み物などを購入し、時間ギリギリまで一緒にいることにした。
左手は腰に回し、これ以上ないくらいに雪奈を味わう。
病室に他の入院患者はいないため、キス程度であればし放題だ。
同棲が始まったら、いっぱいいっぱいキス以上のことをするだろう。
「健斗くん……」
好きな人の感触をもっと味わいたいのか、雪奈は両腕を健斗の背中に腕を回してきた。
ギュー、と力を入れて抱き締めてくるため、柔らかな感触が全て伝わってくる。
華奢な体躯なのにこんなに柔らかいのは本当に不思議だ。
「私の全てを感じてください」
もっともっと自分のことを想ってほしい、そう感じさせるくらいに強く抱き締めてきた。
力を入れていても柔らかい感触のためか痛くはないし、むしろ大きな膨らみが至福な時間をもたらしてくれる。
「はあ……これはいい」
もっと触れていたい、という想いにかられ、健斗も両手に力を入れて抱き締めて抱き締めてしまう。
右手首に鈍い痛みが走ったが、それでも雪奈を感じたいから離さない。
「健斗くん、大丈夫ですか?」
右手も使って抱き締めているから心配したのか、雪奈が心配するような瞳で見つめてくる。
「大丈夫」
絶対離したくないため、どんなに痛みがあっても我慢だ。
雪奈が離すことはないから痛みを我慢する必要はないのだが、絶対に右手の力を緩めない。
「あ……う……」
痛みを感じているだろう雪奈が止めて、と言わないのは、力を入れて抱き締めてくれたのが嬉しいからだろう。
どことなくM気質なとこがあるので、これくらいの痛みは大歓迎、という顔だ。
相手は健斗限定なのだろうが。
「もっと強く……」
かなり力を入れているのだが、雪奈にはまだ足りないらしい。
「これ以上は……」
──雪奈の体に痛みを残してしまう可能性がある。
そんなことは雪奈も分かっているだろうが、まるで傷を自分の体に残してほしいかのようだ。
「私は大丈夫ですので、健斗くんの力いっぱい抱き締めてください。右手が痛いのであれば別ですが」
「雪奈……」
「確かに今も痛いですが、健斗くんに抱き締められると思うと、痛みが心地好く感じます」
完全にドMな発言であり、雪奈は健斗に与えられるのはこれくらいの痛みも快感に変わってしまうらしい。
初体験の時は今とは比べ物にならないくらいの痛みを感じるだろうが。
「もっともっと力を入れてギューってしていいんですよ? あ……」
本人の望み通り、健斗はさらに力を入れて雪奈を抱き締める。
恐らくかなり痛みを感じているだろうが、絶対に止めて、と雪奈は言わない。
もしろもっと強く抱き締めてほしい、という瞳で見つめられる。
「私は健斗くんに命を救われました。だから健斗くんに恩返しがしたいです。健斗くんの望みは私が全て叶えます」
愛が重い、と思わずにいられないが、全てを捧げたいほどに好きなようだ。
雪奈は好きな人には何でもしてあげたいヤンデレ気質らしい。
何でもしてくれるというのは好都合で、好きな時に好きなだけイチャイチャすることが出来る。
「沢山恩返しされようかな」
「はい。一生かけてお返しします」
つまりは一生側にいたいということだ。
頬を赤らめて胸に顔を埋めてくる雪奈はとても可愛く、一生側に置いてもいいとは思う。
「健斗くんの匂い……」
匂いフェチか、と思わせるくらいに、雪奈は健斗の胸の匂いを嗅ぐ。
しかもスーハー、と鼻息が聞こえてくるため、今の雪奈は健斗の匂いが脳を刺激しているだろう。
匂いが嗅がれるのは嫌ではないが、胸元が若干くすぐったい。
「手を頭にやって胸に力いっぱい押し付けてください」
「いや、流石に苦しいだろ」
まさかの発言に健斗は驚く。
力を入れて押し付けたら息が出来なくなる可能性があるのだから。
「健斗くんになら苦しくされても問題なしです」
「苦しくしたいわけではないからね」
相手を苦痛にさせる趣味があるわけではないし、イチャイチャ出来れば充分だ。
むしろ相手を苦しくさせようと思う人の方が少ないだろう。
「健斗くんになら苦しくされても問題なしです」
「何で二回言った?」
「苦しいくらいにギューってされたいからです」
「そう……」
初めて雪奈にドン引きしてしまった。
だけど離す気はないため、左手で雪奈の頭を抑えて思い切り胸に顔を押し付ける。
「あ、う……」
明らかに苦しそうな声だが、止めることをしない。
一分おきに息継ぎをさせてあげ、しばらく顔を胸に押し付けるイチャイチャ?
が続いたのだった。
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