外でも甘々
「やっとギプス取れた」
六月に入ってから病院に行くと、ようやく医者からギプスを外していいと許可が下りた。
まだ完治したわけじゃないから包帯は巻いているが、ギプスがないだけで物凄い解放感だ。
「良かったですね」
病院にはもちろん雪奈も連れてきた。
用事があるのは健斗だけだが、一緒にいたいという不純な理由から連れて来てしまったのだ。
これから学校に行くからお互いに制服で、健斗はワイシャツ、雪奈はブラウスの上からノースリーブのベストを着ている。
ブラウスだけだと透けてしまう恐れがあるため、他の人に見られたくないと思った健斗が雪奈にベストを着せた。
「そうだな。もうすぐ右手を使って雪奈を気持ち良くさせられる」
今までは使えなかったが、利き手が使えるようになればもっと気持ち良くなるだろう。
「はい……でも、外で言われると恥ずかしい、です」
頬を赤らめながら頷いた雪奈は、周りの視線を気にしているようだ。
病院から出たばっかなので人は多く、流石に恥ずかしくなったのだろう。
「そうか。俺は絶えずイチャイチャしたいんだけどな」
「あ……」
ギプスが外れた右手も使い、耳まで真っ赤にしている雪奈を自身に引き寄せる。
病院の前で、しかもこんな時間から何やってんだ? と周りに思われようとも、健斗は雪奈とイチャつきたくてしょうがない。
一方の雪奈は「あう~……」と恥ずかしそうにしているものの一切抵抗をすることもなく、まさに健斗にされるがまま。
外でエッチなことはしないが、このままずっとくっついていたい。
雪奈とイチャつけない学校の授業は退屈でしかなく、このままサボりたい気分になる。
流石に自分の我が儘で雪奈をサボらすわけにはいかないので、しばらくしたら学校に向かうが。
「雪奈とイチャイチャするの好き」
「私も好き、ですよ。私がこうしたいのは、健斗くん、だけです」
上目遣いで破壊力抜群のセリフを言われると、思わず胸キュンしてしまう。
離したくない、という想いが出てくるし、このままいけば本当に彼氏彼女の関係になるかもしれない。
そう思うくらいに健斗は雪奈のことを好きになりかけている。
尽くしてくれる雪奈は本当に可愛いしエロくて、男からしたら彼女は最高の女性だろう。
しかも好きな人以外には一切興味を示さないため、浮気の心配が一切ない。
「可愛い……」
コツンとお互いのおでこを軽くつっくけて見つめ合う。
こんなことは外ですることではないかもしれないが、雪奈を見たらイチャイチャせずにいられない。
「もう少しイチャイチャしてから学校に行こうか」
「はい。健斗くんの思いのままにしてください」
了承が取れたので、健斗は雪奈を連れて人気のない場所へと向かう。
人気がない……というか入院患者がのんびりとする中庭ような場所だから全く人気がないというわけにはいかないが、午前中はあまり人が来ないのは入院中に確認していたため、雪奈と一緒に来た。
誰でも来れるので、退院した健斗でも入ることは可能だ。
「んん……」
人がいないことを確認して、ベンチに座った健斗は早速雪奈にキスをする。
雪奈の頭と背中に手を回し、いっぱい彼女の唇を味わう。
「うわー、病院の敷地内でキスしてるバカップルがいるよー」
ふと声がした方を向くと、何故かニヤニヤとしている夏奈がいた。
制服を着ているから入院したわけではないだろうが、病院にいる理由が分からない。
体調が悪そうには見えないので、何か病気になったわけではないだろう。
「な、な、なななな夏奈? 何で病院に?」
妹の登場に驚いた雪奈は、今まで以上に顔を真っ赤にさせた。
「二人のイチャイチャを見たいから朝から尾行しちゃった」
てへっと舌を出して言われたので、少しだけイラついてしまう。
二人をつけたのだから病気やケガで来たわけじゃないから安心はしたが、イチャイチャを見たいからって尾行はしないでほしい。
しっかりと人がいないことを確認したつもりだったが、物影に隠れられて夏奈に気づかなかったようだ。
「ちなみに、私もいるよーん」
「うげ……」
「何で私が現れたら嫌な顔をするのかな?」
夏奈の後ろから現れたひよりを見て、健斗あからさまに嫌な顔をした。
複数の人に尾行されて気づかなかった自分に腹が立ったからだ。
そのせいで雪奈に恥ずかしい思いをさせてしまったのだし、これからは外でキスは気を付けなければならない。
二人きりの時にはいっぱい恥ずかしがらすが。
「気にしないでくれ。それで何でいるの?」
「登校していたら夏奈ちゃんに出会って、二人を尾行するって言うから面白そうだなって思ったんだ」
尾行したことに悪びれた様子もなく、ひよりはそう告げる。
どうやらひよりは夏奈とも知り合いらしく、雪奈経由で友達になったのだろう。
「おかげでいいものが見れたよ。教室でキスはしてくれなかったからね」
人がいる教室でキスするわけがない。
「やっぱり二人は教室でもイチャイチャしてますか?」
「すんごいよ。長瀬くんは利き手が使えないから、雪奈が手を添えて一緒に黒板を写してたの。もうブラックコーヒー必須」
「わお、ラブラブバカップル~」
「話が盛り上がっているとこ悪いが、俺たちは学校に行くから」
二人が登場したことでイチャイチャする気分はなくなったため、健斗は雪奈を一緒に学校に向かう。
「待ってくださいよ」
「置いてかないで」
今日は雪奈だけでなく、ひよりや夏奈と学校に行く羽目になった。
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