願い事
「あ、あれは……」
七夕祭り楽しんでいる最中、健斗は大きな笹を見つけた。
少し遠目で分かりづらいが、笹に短冊が吊るされている。
どうやら誰でも短冊に願い事を書いて笹に付けることが出来るようだ。
笹に近づくと何人かの人が短冊に願い事を書いている。
「願い事書いてみる?」
手を繋いで隣にいるう雪奈に訪ねている。
何度見ても可愛いな、と思いつつも、健斗は雪奈を見つめた。
「はい」
どうしても叶えたい願い事があるようで、雪奈は力強く頷く。
ある程度は予想出来てしまったが、自分も似たような願い事かもしれないな、と健斗は思う。
雪奈の想いは分かりきっているし、最近は健斗も彼女に想いを募らせている。
短冊を書きに行く前に雪奈をギュっと優しく抱き締め、健斗か彼女の耳元で「ずっと離さないよ」とだけ呟く。
頬を赤くして「はい」と頷いた雪奈は、健斗が短冊にどんな願い事を書くか分かっただろう。
毎日一緒にいる雪奈に願い事を隠す必要はないし、知って欲しいと思ってしまった。
嬉しそうにしている雪奈を連れ、健斗は短冊が置いてあるテーブルに向かう。
書くのを待っている人が列を作っているに最後尾に並ぶ。
並んでいる間は暇になるので、健斗は雪奈を抱き締めたり、彼女の顔を自分の胸に埋めさせたりする。
こんな美少女と一緒にいれて他に何をお願いするんだよ? と思っていそうな嫉妬の視線を周りから向けられるが、健斗は一切気にしない。
もう何度も人前で雪奈とキスしてしまっているからだ。
それに雪奈が可愛すぎるから見せつけておかないと、トイレに行った時にナンパされてしまうだろう。
この女の子はナンパしても意味がない、と周りに思わせないといけない。
絶対に誰にも渡す気はないし、雪奈自身も他の男の元に行きたいと考えてすらいないだろう。
「雪奈……」
「健斗くん……」
ゆっくりと顔を唇に近づけていると……。
「お兄ちゃんお姉ちゃんはどこでも盛るんだね」
邪魔しに来ているんじゃないかと思うほどに、タイミング良く夏奈が現れる。
雪奈と同じく浴衣を着ているが、夏奈は彼女と違って赤を基調をしてとても似合っている。
後ろに夏奈をナンパしようと伺っているであろう人たちがいたが、男がいると分かったからか産まれたてのクモが散るかの如く去って行った。
姉妹揃って相当モテるらしい。
「夏奈もお願い事があるの?」
「そりゃあるよ。お姉ちゃんとは違うと思うけどね」
誰にでも願い事があるのは当たり前だし、夏奈も夏奈で願い事があるのだろう。
雪奈のお願い事は夏奈も分かっているようで、彼女は「てへっ」と笑った。
ずっと雪奈の笑顔を見てきたからか、健斗は夏奈が笑っても可愛いとだけしか思えない。
ゴールデンウィーク前であれば、もしかしたら勘違いで夏奈を好きになっていた可能性がある。
でも、似ているとはいえ雪奈と一緒にいれば、どんなに夏奈が可愛くても霞んでしまう。
「お、短冊書けるぞ」
雪奈とのイチャイチャと夏奈と話したことによって短冊を書くスペースが出来た。
早速テーブルまで行き、健斗はペンと短冊を持つ。
書くことはもう決まっているので、スラスラとペンを走らせる。
雪奈と夏奈も短冊とペンを持って願い事を書いていく。
「笹に付けますか」
願い事を書き終えた健斗は笹の前まで行き短冊を付ける。
かなりの数の短冊が付けられており、可愛い彼女が出来ますようにや、お金持ちになれますようになど、己の欲望のような願い事が多い。
「雪奈の見せて」
「あ……」
短冊に書かれている願い事を見られた恥ずかしさからか、雪奈の頬がカアァァ、と真っ赤に染まる。
まさか見られると思っていなかったのだろう。
耳まで真っ赤にしいた雪奈は俯いて短冊を笹に付けていく。
やっぱり自分と似たような願い事だったな、と健斗は思う。
「短冊に書かれているのが、私が叶えたい願い事、ですから」
雪奈の短冊にはこう書かれていた。
──ずっと健斗くんと一緒にいれますように。愛してます。
ちなみに夏奈の願い事は興味はなかったので見なかった。
甘々で穢れた同棲生活~事故で記憶を失ってお見舞いに来てくれる学校一の美少女に「セフレの関係なの?」と聞いたら本当になった~ しゆの @shiyuno
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