第35話 17年間ツッパリ続けた俺は、後悔を押し殺しながらセンセーの大切なものを奪い去りました。
「うぼわぁあーー!!」
俺の手から出た巨大な光がエバハン先生を包み込む。
「……くっ」
俺には俺の生き方がある。
俺はこいつらが好きだって。
俺はこいつらが見下されたり、ひでぇことされてんのが嫌だって。
そういう風に思ったら、やっぱよ?
やんなきゃなんねぇんだよ。
俺に出来ること、思いつく事がありゃ、それをやんなきゃ男じゃねえって、やっぱ思っちまうし、そう思う自分でありたい、死ぬまでそうでありたいって思うよ。
……けど、やっぱ辛い。
一度は好きになりそうになったセンセーを。
やっと受け止めてくれるんだなって、嬉しいなって思ったことのある相手に、こんなひどいことはしたくはなかった。
「……っ?」
光が収まり、その中で腕をクロスさせて防御な体制をしたセンセーが、目をパチクリさせる。
「……あれ、生きてる?」
言いながらセンセーは自分の手で自分の身体を触る。
「あれ? ある、あるぞ? 腕も、脚も、首も、頭も、……っ! ……頭?」
けれど俺は振り返らない。
「……はっ、やっと気付きやがったか」
後悔してる素振りなんか見せない、ずっとワルに徹する。
それが、ワガママな俺から戦った相手に出来る、たった一つの筋の通し方だ。
「……け、けけけ毛は?」
センセーがツルツルになった頭を、ワケがわからないといった様子でペタペタ手で触る。
「あはははは! センセーよぉ、何存在しねーもんを触ろうとしてんだよ?」
そう、俺は魔法でセンセーの肉体から生える毛という毛を吹き飛ばしてやったのだ。
「……っ! ……そそそそんなバカな!」
中年&独身&絶賛隣のクラスのバーボー先生を口説き中であるエバハン先生にとって、毛髪の重要度はそれはもうヤバいレベルで高いだろう。
「ふっ、あれから練習したんだよ、魔法、なぁ、褒めてくれよ? 教え子の魔法が成長して嬉しいべ?」
「え? な、ない? ま、マジでないの? え? 私のカッコいいリーゼントは?」
「心配すんじゃねぇ。センセーのリーゼントは元からダセェからよ」
「う、うぅ……」
頭を押さえたままんセンセーは、瞳から虹彩を消しうめき始める。
……ちっとやりすぎたかな。
けど、魔物にひでぇことしたらひでぇ目にあうって思わせないと、ビビらせないとってなるとやっぱこんくらいはやんなきゃな。
「ま、んでもセンセーがマジに反省したっていうならよ?」
そして、人に対して自分の意見を通す時に大切なのは、飴と鞭、絶望と救いだ。
人は追い込まれた時、逃げ道が用意さえされていれば、たとえそれがどんなに分の悪いものでもすがりついてしまうが、逆に逃げ道がなければ、どんなにヘタレな奴でも無理矢理前に出てしまう。
「う、うぼぁ……」
「その髪の毛、一応戻してやるしゅ……」
「うぼぁあーーーー!」
センセーが叫びだすと同時に、センセーの両手両足が赤く光りだす。
「し、しししし死ねーー! ダイナ・マイティ!!」
そして無数の赤い閃光は細く鋭く、けれども力強く俺に向かって発射された。
「ちょ! さすがにそれは!」
ふむ、……飴を見せるのが少し遅かったみたいだ。
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