第12話 慈愛に満ちた俺は、下っ端のブタヤローを説教かますだけで許してやりました。
「おう! テメェが魔王か?」
俺がブタに向かって言うと、ブタヤローは不機嫌そうに近づいてくる。
ピコン!
【オーク・ガーディアン】
レベル13
力:777
体力:555
素早さ:111
知力:7
精神:3
運:0
スキル:クロスホーク・肉体硬化・藁の家作り
ふむ、これがこいつの名前か? ガーディアンは知ってるぞ、セーターの前にボタンついてるやつだろ? 鎧着てるくせに変な奴。
「……人間が一体何の用だ」
「いいからテメー、ちっとこっち来いよ?」
俺がケーちゃんの頭の上から動かないで人差し指をくいくいと動かすのを見て豚ヤローは機嫌悪く舌打ちするが知ったこっちゃない。村の食料を奪う悪りぃ奴に気を遣う必要なんてねーよな。
「……何の用だと訊いている」
言いながら渋々って感じで豚が近づいてくる。
「テメーよぉ? ダメだろ! 村の食料奪っちゃよー?」
「……は? 我ら魔王様に仕えし民が、人間風情から貢物を受け取るのは至極まっとプベっ!」
言い終わる前に横っ面をぶん殴ってやる。
俺嫌ぇーなんだよな、こーいう調子くれてる奴。ちっと強ぇーからって他人を見下して、偉そにして、そんでそれをなんかお前らのためだとか、なんよ?
よくわかんねーけど、テメェをすげー奴だって思うために、そんで気持ちよくなる為に他人を見下してんくせに、それに気付きたくなくてなんか必死な奴が。
「……くっ、いきなり何をする?」
「立てよ」
「……くっ、人間風情が我にこんなことをしてタダで済むと……ブベッ!」
「立てっつってんだ! テメーなにその人間フゼーにぶん殴られて倒れてんだよ? 偉ぇんだべ? 強ぇんだべ? ならかかってこいや!」
思い切りガン飛ばしながら言ってやると、豚ヤローは立ち上がり、思い切り睨みつけてくる。
「この下衆がぁ……」
「……んだよ、いい目すんじゃねーか」
「……我に楯突いたこと、後悔させてやる」
「上等、豚バラにしてやんよ!」
言い終わる前に豚は走り出し、斧を大きく振りかぶる。
「うぉぉぉーー!!」
ふっ、前にも喧嘩に斧持ってきた奴がいたけど、大体あーいうデカい武器持って来ん奴に実際使う度胸なんてねぇんだ。
だからこっちがビビンなけりゃあ向こうが勝手にこっちの気迫にビビうおっ!
あろうことか豚バラ野郎は俺の脳天目掛けて斧を躊躇いなく振り下ろして来やがった。
「……くっ、今のをよけるとは、少しはやるようだな」
……何がやるようだバカ!
「うぉー!」
今度はこちらから豚に向かって全力疾走。
「ふっ、バカめ」
すると豚はでっかい斧を俺目掛けてぶん投げる。
ピコン!
【スキル、回避性能+3発動】
うぉっと。
無意識に左に転がると、さっきまで俺が居たところを斧が通過する。
流石は俺だ、今日も野生の勘が冴えてやがる。
「うらぁ!」
「うぶぁっ!」
そのまま豚の懐に入り込んでその横っ面をを殴り飛ばしてやると、豚は回転しながら遥か後方へとぶっ飛んでいく。
「……さすが俺のパンチ、相変わらず最強だな」
でもいくら何でもこんなにぶっ飛んだっけ? ま、いっか。
「おう、コラ、お前よー」
俺は倒れる豚を見下ろしてめいいっぱい凄んでやる。
「……くっ」
「わかんよ? 強けりゃそれ使っていろんなもん手に入れたくなんのも。けどお前、モノには限度っつーもんが……」
俺がありがたい説教カマしてる途中で豚やが人を殺しそうな視線で睨んでくる。
「くっ、さっさと殺せ!」
「はぁ、何言ってんだテメー」
「どうせ敗北してここまでの身、偉そうに講釈まで垂れられては屈辱が過ぎる。……せめて一思いに」
……ったく、何言っちゃってんだこのおデブちゃんはよぉ。
「テメー、どんな育ち方したか知んねーけどさ? 喧嘩したくれぇで殺すわけねーべな? それとも何か? 北海道じゃ喧嘩で負けたら殺されるルールでもあんのか?」
「……くっ、情けをかけるつもりか」
「別に情けなんかねーよバカタレ、いいか?てめー、これから金輪際ナイトフィーバー村から食いもんをだな……」
「サタデナイの村だ」
俺のかっちょいい説教をらまたしても、こんどはケーちゃんに遮られる。
助けよーとしてる村の名前間違えるとか超恥ずいから後でこっそり教えてくれりゃいーのによ。
「と、とにかく! テメェもー悪りぃことすんなよ?」
「……ふっ、そうしたいところではあるがそうもいくまい」
「んだとテメー、もっ発ぶん殴ってやろーか?」
「……そうではない、その件について指揮しているのは私ではない、我が隊長であるドラゴン・ガーディアン様が指揮をしているのだ」
なんだ、こいつ下っ端かよ。
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