第11話 気合の入った俺が、神殿に殴り込みをかけたらブタが出てきました。

「よし、着いたぞ!」


 ケーちゃんの背中に乗ってかっ飛ばすこと15分、俺達の目の前にはなんか神殿? っていうのか? なんかバカでかい白い建物がある。


「ふむ、流石は魔王親衛隊の居城、……禍々しい“気”を感じるな、主人よ、気をつけ……」


「コラーーーー!!」


 俺は神殿の前に仁王立ちしてとりあえず全力で叫んだ。


 基礎中の基礎だけど、知らねえ奴がいるかも知れねえから説明しといてやる。


 喧嘩する時は、遠慮・恐れ・計算はしちゃいけないんだ。


 喧嘩ん時に本当に怖ぇ奴ってのは強い奴じゃねぇ、危ねぇ奴だ。


 つまり初対面の時に、『あっ、こいつやべぇ奴かも?』と思わせられたら有利になるし、『こいつってまともな奴じゃん?』とか思われちまったらほぼ終わり。


「ちょ! いきなり何をしている!」


 そしたらケーちゃんがなんか驚いた感じでこっちを見てくる。


 ……ええ、ケーちゃんこんなでっかい図体して喧嘩初心者かよ。


「バーカ、かまし一発に決まってんべが? こらから喧嘩しよーって時に舐められたら終わりだろ?」


 俺が呆れ声で言ってやると、ケーちゃんもまた呆れた様子で睨み返してくる。


「いやいや、相手は魔王親衛隊だぞ! そこらの酒場のならず者と争う時のような……」


 ったくわかってねーなーケーちゃんはよ? 俺だって魔王がやべー奴なんだろーなってくれーは感じちゃいるんだよ。


 けど、だからこそこっちはそれを悟られちゃおしめぇなんだ!


「……ま、いいからよ? ちっとそこに座って頭下げてくんねぇ?」



 そしたらけーさは渋々ながらもお座りの姿勢で頭を、顎が地面に着くくらい下げてくれる。


「……あらよっと!」


 そして俺はケーちゃんの頭の上に飛び乗り、その上であぐらをかく。


「主人よ、私は主人に仕えることを決めた身、どのような扱いも受け入れるつもりではいるが、……これには一体どんな意味が?」



「悪りぃな、後でちゃんと説明してやんからよ? 魔王のヤローが出てきたら、ずっと機嫌悪そーに『ゔぅ〜』って唸っててくれねぇか?」



「まぁ、それはかまいはしないが……」


 拗ねた感じの声でケーちゃんが言う。


 ……さて、やりますか。


「コルァーーーー!!!」



 俺がもう一度怒鳴ると、神殿のデカいドアがゆっくり開く。


「おい! マオーヤロー! 大モン気取ってねーで早く出てきやがれ!」


 そしてでっけぇドアから現れたのは、5mくらいの、鎧着て斧持ったブタだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る