第22話 ダチを大事にする熱き俺は、死にかけたダチを助けました。

「……テメェ、何しやがる!」


 俺が怒鳴りつけると、エバハン先生は両手を広げて今からアメリカンジョークでも言って来そうな感じの『やれやれ』のポーズ。


「何を言っているんだい? それに、先生に向かってテメェは流石に……」


 犬っころを見ると、のたうちまわってはいないものの、未だ苦しそうにうめいている。


 この男、これだけのことをしておいて今呼ばれ方のことを指摘するだと? 


 つまりこいつは、テメェのやったことを1ミリも悪いとは思ってないってこと。


 センセのくせにそんなこともわかんねーのかよ? 


「うるせぇ! ひでぇことしやがって! こいつ血だらけんなっちまったじゃねーか!」


「あたり前だろう、“アイスニードル”を突き刺したのだから」


 先生は『こいつ、何バカなこと言ってんだ?』みてぇな感じに鼻をならす。


「大体魔物に対してひどいことだなんて、君は本当に何も知らないんだね?」


 ……ちっ、こいつぁ話にならねぇな。


 俺は先生の方からクルリと振り返ると、犬っコロに駆け寄る。


 ……やっはひでぇ怪我だ。センセが飛ばした針は結構奥まで刺さっているらしく、まだ血が止まっていない。


「くそっ! 犬っコロ、しっかりしやがれ!」


 先程より明らかに元気がなくなってきた犬っコロにハッパかけるも、そんなもんでどうにかならねぇもんだってくらいは俺もわかる。


 去年、3丁目のパン屋で飼ってたジロ吉が癌で死んじまう前もこんな顔してた。


 まだ知り合ったばかりだけど、こんな根性座った犬っコロ、俺ぁ嫌いじゃねぇ。


 俺ぁ、こいつにいなくなって欲しくはねぇ。


 どうすればいい?


 俺は犬っコロの血が出てる腹に手を当てる。


「治れ、治れよ!」



 すると突然、俺の手が光り始める。


「うわっ!」



 違う、俺ぁ火を出したいわけじゃねえんだ。


「ちょ! うわっ!」



 俺の意思とは裏腹に光は一層強く、大きくなっていく。



「……はぁ、はぁ」


 くそっ、俺は、俺がこの手で犬っコロを燃やしちまったのか?


 ぺろり。


 振り返ると、そこには元気に俺の首筋を舐める犬っコロ。


「ハッハッハッハッ……アオォーン!」


「犬つっコローー!!」

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