第56話 デートコースみてぇな洒落たもんとは無縁な俺は、珍しい鳥を餌にウンコ姫の機嫌をとりました。

【……コホン、そんなことより、タケシくんはウンコ姫を“寂しく”させちゃったんです。なら、やる事は一つですよね?♪(´ε` )】


 ……確かに、違いねぇや。


 バカな俺に出来る、寂しくさせちゃった相手に出来ることなんて一つしかねーわな。


「ったりめぇよ! そうと決まればさっそく行くぜ

!」


 ピコン!


【キャー(๑˃̵ᴗ˂̵)タケシくんたら情熱的ー!】


卍卍卍


「な、なんだ貴様は!」


 マルソウ城の入り口、門番の兵士が立ちはだかるが、俺は気にせずバイクを加速させる。


「何ぃ、このまま突っ込んでくるつもりか?」


 俺はアクセルをパンパン、と2回煽ってからさらにもう一段階加速させる。


「な、なんて奴だ! ……うぉっ!」


 俺の狙い通り、門番は門の脇に跳んで逃げる。


 ポイントは相手に認識されてから加速すること。ホントは余裕のある距離でも向こうからは止まる気のない頭のおかしいヤローに見える。


「隙あり!」


「何ぃ!」


 門の付近の兵士たちは一斉にこちらを向くが、猛スピードで突っ込む俺に飛びかかってこられるような奴はいない。


「うぉーーー!」


 ……っと、階段か、なら。


 進路を右に振り、階段脇の坂道にバイクを乗り上げさせる。


 ヒュン……。


 ガシャン!


「うおっと」


 流石にスピードが出ていると坂を登ったくらいで車体がジャンプしてしまう。


 着地の際に物凄い衝撃を受けるが気にせずアクセルを捻る。


 早く言いたい。


 なぜだろう、俺はアイツに言いたい事がある。


 どんな顔するんだろう?


 そう思うと何故か不安よりも嬉しさが込み上げてくる。


 顔は可愛いけどワガママで。


 お姫様の癖にウンコの話が好き。


 ノリと勢いだけで生きているようで意外と気ぃ遣いーなプリンセス。


 俺は多分、アイツに笑って欲しいんだ。

 

 アイツにゃ申し訳ないけど、なんだか楽しくなってきやがった。


「緊急事態緊急事態! 物凄い勢いの馬に乗った男が城へ侵入! 総力を上げて引っ捕らえろ!」



 部下に向かって大声で叫ぶ兵士をひょいと避けて赤い絨毯の廊下に突入。


「うわぁ! も、ものすごいスピードだ! 王を王をお守りするんだ!」


 ……どこだ?


 少しスピードを緩め、辺りを見回しながら城内を走るも兵士とメイドしか見当たらない。


 偉い奴はもっと奥の方……ん?


「固めろ! 鉄壁のフォーメーション!」


 見ると一箇所に兵士が三十人以上で一つのドアを守ってる。


 ……あそこか?


「うわっ、こっちに来るぞ!」


 俺は車体をバンクさせ、進路をその扉に定めると、そのままバイクを加速させる。


「ふん!」


「「うおっ!」」


 そして奴らの足元に爆弾をイメージした魔法を一発。


 ドーン! という音と共にドアの前の床が崩れ去る。


「ほいよっ!」


 そして次に硬めのゴムを魔法で出してやる。


「わっ、なんだこれは!」


「隊長が翔んでる!」


 よし、怪我はないみたいだな。


 アイツんちの職員を怪我させちゃ悪りぃからな。


 「よっ!」


 ドーン!


 もう一発魔法の爆弾を飛ばしてドアを吹っ飛ばし、その中にバイクで突っ込む。


「……うわっ、なんだぁー!」


「…………え? タケシ⁈」


「…………」


 突っ込んだ先はなんかドラ○エの城の王の間みたいな部屋。


 そこには驚いて腰を抜かすマーシャルの父に無言でこちらをギロりと睨むマーシャルの母(この状態で咄嗟にそんな顔できるとか怖すぎるので今後関わり合いにならない事を願う)、そして少しびっくりした感じのマーシャルがいた。


「……」


 父と母はこの際無視してマーシャルをじっと見る。


 どことなく元気なさそうなマーシャルは、それを覆い隠すかのように力強く、不機嫌そうにこちらに歩いてくる。


「……何よ?」


 見るからに鬱陶しそうに言うコイツが今どんな気持ちなのかはわからない。


「ぶふっ……」


 けれど俺はバカだから、出来ることなんてそう多くはないのだ。


「……ホントなんなのよ?」


 でも、根拠はなくてもわかる事がある。


 それは俺が今、


「……暇なんだよ、どっか遊びに行かねー?」


 そう努めて軽く言うと、きっとこの不機嫌でノリのいいプリンセスは軽く笑って、


「……しょ〜〜〜がないわねぇ♪」


 こんな感じでノって来てくれるってこと。


「じゃ、乗れよ?」


 まあとは言ってもよ? 俺ぁバカだからよ? タンデムシートにまたがるコイツが、


「で、どこ行く?」


 なんて軽く言いながらも、目元がちょっと涙ぐんでる理由はわからない。


 それでも、いやだからこそ、


「北の方によ? メスを取り合ったオスがウンコを投げ合って喧嘩する系な鳥の住んでる集落があんだってよ?」


「……最高じゃない、それ」


「……だろ?」


 そして俺たちは一瞬、顔を見合わせてニッと笑い合う。


「「デッパツだー!」」


 楽しく遊べばいいんだと思う。


 俺たちはきっと、そういうふうに出来ている。


 

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