第38話 生まれついてのおばあちゃんっ子な俺は、臭いジジイの出現に大層戸惑いました。

「くそっ! 覚えてろよ!」


「うるせぇ、こ〜のアニマルチン○が!」


 俺がしっしと手を振ると、鎧の奴らがすごすごと帰っていく(隊長のポコ○ンは全員を引かせることと引き換えに治してやった)。


 いやぁ、ホントに魔法ってのは便利だな。まぁまぁなヒデーことしても、元に戻してやれるんだもんなぁ。


 こんな便利ならもっと早く覚えときたかったぞ。


 なんで親もセンセも教えてくんなかったんだろ?


 ……やっぱ嫌われてたからか……っとといけねーいけねー! 


 最近どうにもネガティブになっちまうな。


 えーっと、俺は最強俺は最強。


「ふっ、……やっぱ俺って奴ぁ凄すぎるな」


 とりあえずそう声に出してみると、不思議と少し気が晴れた。



「たとえここの社長が来ようが軍が来ようが返り討ちだな! 早く社長とかがここに殴り込んで来てくれれば話はえーのによぉ」


 ピコン!


【イ・キ・リ(о´∀`о)】


「うるせぇ!」


 俺の本当の意味での自慰行為を邪魔する不届き者にすかさず怒鳴りながら殴るも、そいつはヒュンと消えてしまう。


 ……ったく、ウィン子の奴め。ドンドンうぜぇ感じになっていきやがる。


 まぁだけどそれも、ケーちゃんやガル太郎を置いて来ちまった今はありがたい。


【あー(ㆀ˘・з・˘)いっけないんだー! 女の子にそんな酷いことしたらいっけないんだー(ㆀ˘・з・˘)】


 まぁ、これもこいつなりに気ぃ遣ってくれて……るのかな?


【私と仲良くなりたかったらちゃんとご機嫌取ってくださいぃー(ㆀ˘・з・˘) 5分に一回は褒めてくださいぃー(ㆀ˘・з・˘)】


 ……落ち着け、落ち着くんだ、気遣いだ、これは気遣いなんだ。


「わ、悪りぃ悪りぃ。……お、お詫びによ? この戦いが終わったらデートしてやんよ」


【何言ってるんですか? 偉っそ〜に(*`へ´*) それを言うなら『してくださいお願いします』ですよねʅ(◞‿◟)ʃ】


 ……。


 そうか、こいつは俺と全力でじゃれてくれるってことだな。仕方ねぇ、ならば俺も全力で応えるのが礼儀ってもんだ。


 ……よし。


「ステータス! ……オープおらぁ!」


 バキッ!



 言い終わる前に振り下ろしたチョップがウィン子にクリーンヒット。

 

 


 ピコン!


【……サイテー( *`ω´) タケシくんが触った〜(*`へ´*) エッチー(ㆀ˘・з・˘)】


  しかし、やっとこさウィン子のヤローに攻撃をヒットさせた喜びを感じるどころか俺は今、ウィン子がまた表示したであろうメッセージを見ることすら出来ない。


 なぜなら、


「……うぅ、うぅ〜」


 手が痛いからだ。


 ……こ、こいつマジで硬ぇ。マジでダイヤとかで出来てんじゃねーの?

 


 ガチャリ。


「ん?」


卍卍卍


  音のした方を振り向くと、そこにはなんかヨボヨボっぽいお爺さん。


「ふぉっふぉっふぉっ」


 爺さんは不敵に笑いながら持っていた杖を俺の方に突きつけるようにする。


 ……うわぁ、リアルで『ふぉっふぉっふぉっ』とか言ってるジジイ見たよ、仙人系だよ仙人系。


 ……しっかしじいさんはなぁ、怪我されてもヤだし、別の感じで攻めるか。


「おいおいじーさん無理すんなよ? んなヨボヨボボディでこんなとこくんじゃ……」


「喝っ!」


 じーさんは近づいてくる俺に唾が飛ぶほどの勢いで喝破する。


 くさっ!


「……んだよもぉ〜」


 顔にかかった唾を袖で拭きながら言う。若いにーちゃんだったらもうぶっ飛ばしてるけど年寄りにはどーも甘くなっちまう。


 ま、俺ぁおばあちゃんっ子だからな。


「小童がぁ! ワシが来たからにはもう好きなようにはさせんぞ!」



 じーさんは杖をビシィと俺に突きつけるとそんな大仰な台詞を言う。


 ……うーん、正義のヒーローごっこに入り込んでから魔物をイジメるタイプか?


「……好きなようにってよぉ、どちらかっつーとここってテメーらが俺達を好きなようにする施設なんじゃねーの?」



「……ふん」


 俺の呆れた様子にじーさんは鼻を鳴らすと、こちらを強く睨みつけてくる。


「ワシゃあ客じゃあないぞい。ワシゃあここ“初心者ダンジョン”を管理する【冒険娯楽研究会】の親会社、『(有)ハンメゼンゴロシ』取り締まり代表の、タック・ロールじゃあ!」


 じーさんは至近距離でデカいこえで名乗りをあげくさっ!



「……なるほどなぁ、ってーとアンタはここの社長さんなワケだ?」


「ふん、こーの我が社の利益に仇なす不届きものめが! 成敗してくれよう」



 じーさんはそう言いながら杖の先を緑に光らせる。


「ふん、あの世で後悔するがいい、シャイニン……」


「ニョド・パオン!」


 じーさんより早く、素早く作り出した魔法の球をぶつけてやる。


 ふん、たとえじーさんであろうと、魔物をイジメる奴に容赦するわけにゃいかねーからな。


「……ふん、それがなんだと言うのだ?」


 光が消えた後、仁王立ちで言うジジイに対して俺は不敵に笑い返す。


「……ふっ、チン○を見てみな?」


 俺に言われ、じーさんは無言でローブの裾をゆっくりと捲り上げる。


 そこに見えるのは、やたらとシワシワで、どす黒い、……普通のチン○だ。


「……なにっ?」


「フォッフォッフォッ、チンがどうしたって?」


 




 


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