第29話 心がピュア過ぎる俺は、無機質な女に男の純情を弄ばれました。
「はぁ〜」
またやっちまったよ。
俺はいっつもそうなんだ。
納得いかねぇことにムカついて、人それぞれ事情はあるってのに飲み込めなくて。
けれどそれでそいつをどうやったら折り合いつけれるかなんて知らなくて喚いたり暴れたり。
ピコン!
【ドンマイ(≧∀≦)】
「……うるせーよ」
急に出現するや否やイキった感じで励まして来る黒い板に悪態をつきながら、少し頬が緩むのを感じる。
ピコン!
【すねちゃってぇ、かーわいい(゚∀゚)】
「……この野郎」
【野郎じゃないですー(*`へ´*)フーン】
「……お前、そんなお喋りだったんだな」
けど、今はそれがちょっと嬉しい。
【お前じゃないですー! メッセージウィンドウのウィン子ちゃんですー! お前とか彼氏気取りですか! ……キモっ(*´ー`*)】
「んなこと言ってねーだろが!」
……いや、やっぱ普通にウザいな。
それにしても。
「やっぱ俺、サイテーだよな」
【そんなことないですよ!】
「……ありがとな。でも、やっぱ最低だよ」
ガルムの親分はきっと、俺が考えたこともねーような責任をずっと背負ってて。
奴らの要求に対しても多分俺よりずっとムカついてて。
なのに俺と来たら。
「好き放題偉そーなこと述べるだけ述べてよ? なんも知らねーからって目の前のことだけ見て好き勝手怒って、カッコいいような事だけ吐き捨ててよ……」
ピコン!
【でもでも! 自分達のこと心配してくれたり、自分が酷い目にあう事にムカついてくれるのって嬉しいですよ( ´ ▽ ` )】
ピコン!
【だ・か・ら! 元気出してくださいな! 元気なだけが取り柄のタケシくんがそんな凹んでるの、……なんかヤです(ㆀ˘・з・˘)】
確かに嬉しいな、心配して貰えるって。
しっかし、……まさか文字が出るだけの黒い板に慰められる日が来るとはな。
「……ったく、情けねーよ、俺ともあろうもんがよぉ、凹んで慰められるとは」
少し目が涙ぐみそうな気配を感じ、それを打ち消すように俺は、努めてうざったそうに言う。
ピコン!
【そんな事ないですって! 誰だって辛い時、甘えたい時はあるんです!】
「そーなのかなぁ……」
言いながら半笑いで息を吐いちまう。
いつ振りだったかな? こんなとこ誰かに見せたのって。
……こんなにも心地よかったんだな。
【あったり前ですよ! もっと自分を大事にしないとプンプン\\\٩(๑`^´๑)۶////ですよ!】
なんか……、
「ウィン子って、いいやつなんだな」
【そーでしょうそーでしょう(о´∀`о) いー奴なんです私は! ……なんだったら私の胸に顔を埋めて泣いちゃってもいいんですよ?】
「いや、お前とか胸ねーじゃんよ?」
ピコン!
【(・ ・)】
は?
「……どーいう意味だよ?」
ピコン!
【バカーーー!!!】
バゴン!
黒い板におもっきし殴られる。
「ってぇなコラァ!」
【サイテーサイテーサイテー( *`ω´)】
「はぁ? テメわけわかんねーぞ?」
【せっかく、……恥ずかしいの我慢しておっぱい見せてあげたのに! 女の子の胸、……乳首まで見て『どういう意味だよ?』じゃねーよバーーーカ!!\\\٩(๑`^´๑)۶////】
いやいや、あの点々とカッコが胸ってそもそも無理あんだろ。
……というか。
「……あの点々乳首だったのかよ」
【……サイテー、変態(*`へ´*)】
「いや、……そーいう意味じゃなくてだな」
【つーん( ̄^ ̄)】
くっ、こいつマジかよ?
……けどなぁ、確かに、もしもこいつにも普通に乙女心が存在するってーのなら、俺は怒られても仕方ないのかも知れない。
こいつがもし、自分が黒い板だからって誰にも理解されずに苦しんできたんだとすれば今俺のやったことは最低だ。
「いや、申し訳ない」
【フーン( ̄^ ̄)】
くっ、この顔文字ムカつくなぁ。
しかし我慢だ。苦しんでる俺を慰めてくれたこいつを、俺は深く傷つけたんだ。
「いや、マジマジ! マジに申し訳ねぇって思ってんからよ?」
そして俺は恥ずかしいのを我慢して、黒い板、……いや、ダチのウィン子に勢いよく頭をさげる。
「すまん! 俺が悪かった!」
ピコン!
【……何が悪かったかホントにわかってます?】
「わ、わかってるって!」
【なら言ってみてください】
わかるかそんなもん!
……けどあれだろ? こーいうの開き直られると女って傷つくんだよな? なんかそんなのマンガで読んだことあるぞ。
けどそんなん全くわかんねーよ? 俺ぁ女と付き合ったことなんかねーしよ。
【……やっぱりわかんないんだ( ; _ ; )/】
こうならしゃあねぇ、一バチだ!
「う、ウィン子のおっぱい見てホントは興奮したクセに誤魔化す為に興味ないみたいなリアクションとってごめんなさい!!」
こうなりゃヤケクソ! 俺は一気に大声で捲し立てた。
【……】
ウィン子を見るとなんかプルプルと震えてる。
……ミスったのか?
ピコン
【ま、さっきのは全然乳首とかじゃなくてただのカッコと中点なんですけどね? 騙されてやーんの(о´∀`о)】
「テメェコラァ!」
俺が強く拳をブンと振るも当たる直前でウィン子は消える。
「くそっ!」
ピコン!
そして5メートルほど離れた所に現れると、
【あー! サイテー(゚∀゚) 女の子殴るとかかっこ悪ーい(゚∀゚)】
「このボケがぁ……」
……くそっ、女って人間でもそうでなくてもマジでめんどくせーよな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます