第18話 30になっても童貞かも知れない俺は、一足早く魔法使いにさせられました。

「ああ? んだよこれ、俺ぁオメー、まどかマ○かじゃねーっつんだよ」


「まあまあ、タケシくん、最初はこれが必要なんだってば」


 俺がダッセェ棒を片手に不貞腐れていると、同じクラスのメガネくんになだめられる。


 入学翌日、朝から体育館に登校すると、センセーからいきなりなんか魔法のステッキみたいなのを持たされる。


 うねった木の棒の先に赤い宝石、今ドキこんなもん女子小学生だって喜ばねーだろ。


 ……あー恥ずかし!


「で、センセよぉ、これをどーしろって?」


「うむ、君には今から“魔法”に対する適性をチェックしてもらう」


「というと? っつーか魔法てあれか? マハラギオンとかのことか?」


「マハラギオン?」


「なんかあれだよ、こう、火がバーッと出て敵が燃える感じのやつだ」


 そしたらセンセはうんとうなると言う。


「……なるほど、確かにそれも魔法であるし、君に今からやってみてもらうのはその類の魔法だ」


「なるほどなぁ」


 そっか、今から俺、この棒の先から火ぃ出せんのか。それはちっとおもろそーだな。


「まず、杖の先に、魔力を集めるイメージをしてみてくれ」


「いや、魔力っつったってよぉ、まぁ、……こうか?」



 俺が杖の先が光り出すように妄想? みてーな感じで考えてみると、杖の先が本当に光出す。


「おお! タケシくん、すごいじゃないか!」


 せんせが目を見開いて叫ぶ。


 いや、確かにすげぇな、電球入ってるとかじゃなくてなんか丸く光ってるもんな。


「おお、このパワーは!」


「まさか、賢者の生まれ変わり?」


「す、すげぇ」


 丸い光が段々デカくなってきて、サッカーボールサイズを超えたあたりで周りの連中が次々叫び始める。


 そしてセンセーが言う。


「ちょ! ちょちょちょタケシくん! い、一旦やめてみようか?」



 杖が光るのを想像するのをやめると、光も同時に消える。


「……ふぅ、ふぅ、危うく体育館を消し炭にしてしまうところだった」



 焦った感じのセンセーに俺は言う。


「なぁセンセー、魔法は?」



「ば、場所を変えよう!」


卍卍卍


「すげーな、こんな広い草むらさいたまじゃ見た時ねーよ」


 あれから30分、俺たちはなんかだだっ広い草原にやってきた。


「よし、ここなら思い切りやっても大丈夫だろう、はい」


 センセーに渡された杖を構えると、俺はまた杖の先が光る妄想をする。


 杖の先が光だし、その光は段々と大きくなる。


「おお、すげぇな」


 更に光が強くなるように妄想すると、それに呼応するかのようにより光は強くなる。なんかもはや夜のサッカースタジアムのライトより明るいぞ。


「た、タケシくん、これほどまでの魔力、君は一体……」


 そして少し杖を持つ右腕が熱くなる。


 ……ふむ。


 どうせだったらなんかカッコいいこと出来たらいいよな。マハラギオンみてーな火のやつとか。


 ……なんてことを考えていると、光が炎に変わり、すげえ熱い。


 ピコン!


【攻撃魔法が解放されました】


「おお、なんという魔力だ」


 でっかい炎は更に大きく、熱くなっていく。


 その色は赤から青へと変わり、そして白くなる、……これもはや火なのか?


「熱つつっ!! センセー、これこっからどーすんだよ!」


「よし、そのままそれを発射するイメージをするんだ!」


 なるほど、そう言う感じか。


「っし、ビーーム!」


 ……しまった、ビームはダセェなマジで。


 とか思ってる間に白い火? はホントにビームみてぇに真っ直ぐ伸びて、草原の遥向こう、地平線の奥で爆発する。


 天まで届きそうな白い火柱は見たことがある。


 エ○ァで使徒がやられた時みてぇだ。


「……魔法すげぇな」



 そう言いながら周りを見回すと、センセーもクラスメイトも皆口をあんぐりと開けて固まっている。


「いやいや、センセーよぉ、あんたがやらしたくせにビビってんじゃねぇよ!」


 はぁ、俺また中学ん時みてぇにクラスで浮いちまうのかな。


 悲しくなってくるぜ。

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