第10話
アラステアは周囲の味方に一時後退を命じた。自身はサーレーンを操作し、脚部内蔵のバネで空中で高く跳ばし、そして剣先を下向きにそのまま落下した。その衝撃は凄まじく、敵は吹き飛んだ。しかし当然ながら、搭乗しているアラステア自身の体にも、それ相応の衝撃はあった。だが、休んでいる場合ではない。後退させた味方に今度は、前進の命令を下す。
友軍を束ねるサーレーンは、まず真っ先に敵陣に斬り込んだ。まずは1体。その勢いのまま、敵軍アルコーンのヘレスを盾ごと切り裂いた。そして2体、3体目。周りでも、激しい斬り合いが始まる。
そんな戦況でも、アラステアは的確にサーレーンーを操る。後ろから斬りかかって来たヘレスを、素早く反応しまとめて切り捨てた。すかさず4、5、6体目。まず、真ん中のヘレスの胴に華麗にけりを入れ、吹き飛ばした。そして、横にいたヘレスを袈裟斬りで始末した。最後の6体目のヘレスの剣を盾で受け、そまま剣を弾き飛ばした。そして剣を胴体に突き刺し、とどめを刺した。
『見事な剣さばきだ、アラステア殿。千人斬りの伝説も、あながち嘘ではないとみた』
「群青のミスラール… マーサス・ヴィロン!あなたの勇名は、エリュフィシア中に轟いています。王都を随分と、蹂躙してくれたと…!」
『お褒めにあずかり光栄です。あなたもサーレーンも、かの王都の如く麗しい… ですが、あなたはここに相応しい人間ではない!』
マーサスのミスラールは剣を構え、アラステアのサーレーンも剣も構えた。だが、それから両者は動かなかった。周りではなおも、激しい斬り合いが行われている。それだけに、この相対する2人は、異質な空気を醸し出している。
そのあまりにも完璧な隙の無さに、マーサスはこれまで対峙したどの相手にも感じたことのない感覚を得た。全ての臓腑は肉体という大地を揺るがし、行き渡る血は流れるマグマとなり全身を駆け巡る。その感覚を。
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