第9話
気付いた時には遅かった。コクピット中央の大水晶には、敵の剣が迫っているのが映っている。もう間に合わないと思ったラウンは、アルコーンを捨てる覚悟をした。そして右側面にある脱出用の小水晶に、手を近づけていた。
だが、その時は訪れなかった。敵の剣は横にそれ、そして敵アルコーンの本体は腰から横に真っ二つにされ、地面に崩れ落ちた。
『黄色と黒のイルザーノ…あなたはシフォードですね?』
「そ、そのお声、アラステア様!こちらに来られたのですか!?」
『ええ。ですが、シフォード。戦場で油断は禁物です』
「は、はっ!!申し訳ございません!」
アラステアは、数人の部下たちと共に彼の前に現れた。最初は気付くものが少なかったが、それは瞬く間に、その場のウェルギス兵たちに知れ渡った。味方の兵士たちは歓喜し、敵の兵士たちは動揺している。その為、数で大幅に劣っているはずのウェルギス軍が、ソルモール軍を押し始めている。
「皆の者!祖国の誇りをその胸に!」
高く掲げられたその剣に合わせて、高鳴る多くの声が戦場を支配した。
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