第8話

 ハロットは、一人ジャーダインの元へと向かう。冷たい石の感触を踏みしめながら、一歩一歩登っていく。外では、一層激しさの増す戦争の叫び声が響き渡っている。ありとあらゆる音が混ざり合い、反発し合い、最後には一つの黒い断末魔となる。異様としか言いようがない。


 その禍々しい音たちを振り払い、ハロットはジャーダインがいる部屋のドアを開いた。ジャーダインと部下たちは、意外な来訪者に、眼球と瞼が停止している。

「ハロット殿… なぜ?」

、だからです。将軍殿」

「私はあらゆる状況を注視し、洞察し、考察し、そして最善の策を実行さねばならない」

「いくら最高軍師といえど、我らが信念を曲げられん」

「毛頭、そんなつもりはありません」

 ジャーダインは睨むのを放棄した。


 門前の戦場は、まさに戦いの場になっていた。無数のアルコーンが両軍入り乱れ、大砲が大地をえぐっていた。

 ソルモールで数が多い、ヘレスとウォーブの群れが、絶え間なく襲い掛かってくる。まるでとめどない蟻の大群だ。

「ゲルガー!援軍はまだか!」

 その戦場で奮戦する部隊の一つ、第67大隊の隊長シフォード・ラウンは腹心のゲルガー・カインに催促した。

『ラウン隊長…!落ち着いて聞いてください。ア、アラステア様がご出陣なられたようです。おそらく、もうじきそちらに来られるかと!』

 シフォードは、その報告を聞いた時、一瞬、全ての動きが止まってしまった。それは彼の乗るイルザーノも同様で、無論それは戦場において禁忌である。

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