第7話

 ヴァルナスは北塔を抜けた廊下の途中で、意外な人物に遭遇した。

「おや。これは、騎士団長殿。どちらへ?」

 その頭脳と同じく鋭い刃物のような声が、ヴァルナスの頭に、突き刺ささるように響く。

「…私も前線へ行く。それよりハロット殿、王直属軍師たる貴方こそ、何処へ?」

 ハロットの豹のような目が、ヴァルナスの顔に狙いを定める。

「陛下に報告をしていたのですよ。各国の情勢をね」

 かなり引っかかるものはあったが、ヴァルナスは次の疑問をぶつけた。

「ジャーダインの所へ行くのか?」

「ええ、そのつもりですが―」

 ハロットは何かに気付いたのか、意図的に自らの言葉を遮った。

「まさか、国防団長閣下も出撃なされたのですか?」

 ハロットは勘のいい男だというのを、ヴァルナスは再確認した。

「少なくとも東側の部隊は、出ただろう。あの男のことだ。じきに自ら先頭に立つ。それでも行くのか?」

「むしろ、このような状況だからこそ行くべきかと。――私は軍師ですので」


 中庭に出たヴァルナスを出迎えたのは、ザッカーとその部隊だった。

「ザッカー…」

「団長、再び貴方と共に」

 ヴァルナスは笑顔で、ザッカーの肘を親指で軽く押すように叩いた。


 一同は歩兵隊と搭乗騎士隊にわかれ、歩兵隊は前線へ、搭乗騎士隊は格納庫へと向かった。

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