第6話
「アラステア様…」
ジャーダインは、さっきとはまるで別人のように、物憂げに外を見つめている。殺気も、今は消え去った。
「我らも同じ覚悟です」
副官のハビュールがジャーダインの肘を、親指で軽く叩く。ウェルギス特有の、励ましや一緒にやろうといった意味の、ジェスチャーだ。
「これが最後かもしれんぞ」
「最後の街がある限り、我らは死ぬわけには参りません。それに、まだ同胞たちがいます」
その言葉を聞いたジャーダインは、口元を締めた。そして窓から離れる。
「ザッカー、貴公のベルダーは出撃できる状態か?」
「いつでも出来ます」
ジャーダインの側にいたのは、ザッカー・フディスター。ジャーダインの部下でも、指折りの実力者だ。
「…ザッカー、貴公の隊は前線へ行け。国防騎士団のザッカー・フディスターから、王室騎士団のザッカー・フディスターに戻る時だ」
ザッカーは深く礼をし、出撃に向かった。その場にいたジャーダインたちは、中庭に集結する部隊の隊列を、ただじっと見つめていた。
「ジャーダイン団長…」
「…彼らの覚悟も、無駄には出来ぬ」
ハビュールは、何も言わず頷く。
「我らも行かねば」
ジャーダインは全部隊に、出撃命令を出した。門を突破した部隊の中に、黒いアーゼインが見えたからだ。破壊者の名を持つ、その黒い影が。
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