第5話

 その男は、窓から外を見つめている。視線の先には、死力尽くす同胞たち。そして同胞たちを叩き潰そうとする、無数の侵略者。

「何をしている、ヴァルナス」

 男の窓を見つめる顔は、険しい。ヴァルナスは男の背中が怒っているように感じた。

「…ジャーダイン。頼みがある」

 ジャーダインは、振り向いた視線の先のヴァルナスを睨みつける。ヴァルナスも退くわけにはいかず、睨み返す。ジャーダインの部下たちは、黙ってヴァルナスを見つめる。

「ヴァルナス。貴公、まさか行く気ではないだろうな…?」

「そうだ。アラステア様の命だ。おそらくは、民兵と訓練生も、前線に駆り出させる。だから、我々と共に――」

 ジャーダインは、剣を床に突き付けるように、打ち付けた。音は部屋に反響し、誰の言葉も許さなかった。そして部屋にいる者たちは、ジャーダインから殺気にも似た威圧感を、その身に打ち込まれた。

「我ら国防騎士団の使命は、王都と城を護ること。王都陥落の今、我らが動くわけにはいかん!!」

 ジャーダインは怒りに満ち溢れている。

「…アラステア様がご出陣なされた。あの方は、城に一歩も入れない覚悟だ。ジャーダイン、頼む。城と陛下はイゼルたちが――」

「それでもならん!!こちらにも覚悟がある!!」

「…ホード、東側の部隊に命令だ。もうすぐ東側が突破される」

 ジャーダインは再び、窓の方を見る。ヴァルナスは、眉間の皺を寄せた。そして何も言わず、部屋を後にした。

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