第27話
交差した剣の感覚で、それがあのレクティの騎士だというのは、瞬時に判別出来る。理論や理屈ではない、闘争心という生物本来の感覚でそれが分かってしまう。
アラステアはつまり、己が騎士である必然を、己自身で証明してしまったことになる。闘争という手段を選ばざるを得ない、生命体であると。
対する赤いヘレスの騎士、サーシャ・アルヴィアも同種の直感を有している。だが生き物としては、同類ではない。何故なら、サーシャは自分で選び、その根源的能力を意図して手に入れたからだ。いわば人工物であるのだ。生まれながらに、王族の責務として騎士の宿命にあったアラステアとは異なる。
お互い、剣というコミュニケーションツールがもたらした時間は、そう長くはなかった。だが互いに悟るには、充足した時間だ。
戦うべき敵なのだと。不可避な運命の輪の中に、放りこまれてしまったのだと……
だが、本来ならば戦場での悟りは、重大な隙にもなり得る。というより、隙そのものだ。しかし双方が同じ世界へ引きずり込まれたのなら、話は大きく変わる。
両者は間を取る。勝負の仕切り直しだ。アラステアもサーシャも、勝負の邪魔になる部外者たちを、華麗に斬り捨てる。もはやそこは隔離された意識の中とさえ、言える。
同時に仕掛ける。再び出会う刃たち。だがそこに再会の祝福はなく、覚悟という名の鎖があるだけだ。
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