第26話
フェルロ製では、そう何体もアルコーンを沈黙させるには至らない。精々が10体。それも万全に手入れをし、最高の腕を持つ職人が鍛え上げたもので、だ。
さらに付け加えれば、最高の腕の搭乗騎士であることも、必須条件。
消耗品の側面が強いヘレスの剣では、もう既に限界だ。
「シフォード!援護を!」
味方が目に見えて減り、明らかに本来の用途ではない、折れた剣で敵の頭部を殴っている現状に、さすがのアラステアも心まで折れそうになっている。
それでもやや後方で敵を駆逐し、駆けつけるシフォード・ラウンの部隊は希望の火だ。
だが、あらゆる勇気や希望が、神まで味方に出来るわけではない。アラステアは敵の増援部隊を率いる赤いヘレス。アラステアの心と体は、まるで冷たい稲妻を浴びたようになってしまった。そして歴戦の騎士としての直感はそれを、絶望だと叫んでいた。
アラステアは戦場の最前線という状況の中で、大体にもヘレスを乗り捨てた。もちろん死にたいわけではない。敵の兵士を斬り、馬を奪い、最前線から抜け出した。
目的はただ一つ。もはや鉄くずと同義のヘレスから、他のアルコーンへと乗り換えること。幸いそう遠くないところにまだ新しいベルダーがあった。乗る前、休息時でも狙われたか、ベルダーの周りには敵味方双方の骸が転がっている。
ベルダーに乗り込んだアラステアは、赤い絶望に立ち向かう覚悟を決めた。
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