第28話

 火花は現れては消え、そして現れる。剣がぶつかり合うその度に。剣だけではない。

 盾もアルコーンという鎧も、激しさの中でその一瞬で散っていく花は咲き続ける。


 人で言う顔面。ちょうど眉間のあたりだ。そこにベルダーの盾の先が押し当てられる。押されるヘレス。


 さらに追撃を試みるベルダーと、踏ん張り、体を整え迎撃に向かうヘレス。今度はヘレスが勝った。ベルダーの左太ももを裂く。とはいっても、そう深くは裂けなかった。薄皮のような装甲がひらりと舞う。


 一歩引くベルダー。それを見逃さないヘレス。先ほどベルダーが押したのとは逆に、ヘレスが盾を使い敵の胴体にタックルを開始する。


 ベルダー全体に、衝撃が広がる。乗っているアラステアも、一瞬気が遠のいたほどだ。


 戦いでの一瞬とは、すべからく隙を意味する。戦士、騎士として最高峰の者同士ならば、それは致命傷という意味でもある。


 押された勢いで、ベルダーは背中から地面にダイブする形となり、土をえぐり、砂を巻き上げ、草花を焦がし、小石の雨の中をそのままの体勢で滑ることとなった。そして起き上がるよりも早く、敵の攻撃に対処しなければならなくなった。


 人で言えば心臓。そこは搭乗騎士に避けようがない一撃が当たる場所。そこに今、絶望の刃が突き立てられようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る