第12話

『アラステア様!我らも共に!』

 サーレーンが周りの敵兵を薙ぎ払っている時、突然通信が入った。言葉の前に、敵を打ち砕く音がけたたましい。

 その後に続くのは、アルコーンの足音、歩兵の進軍の音、そして騎馬隊の草原を駆ける音と共に耳に入ってきたのは、聞き覚えのある声だ。

「ヴァルナス!あなた達も…」

『我らとて、偉大なるウェリオンの血を引く戦士…』

『このガロンタの草原で、終わりになるわけには参りません!』

「ヴァルナス、ですが陛下や幼い王族たちを…」

『心配ありません。ジャーダインがいますから。それに…』

 今まさに敵に襲われているのが、音だけでもわかる。

『その陛下の命令です!そもそも、あなたやヘルムイン様らが出撃されて、我らが城で籠っているいては、王室騎士団の名折れ!』

「…分かりました。では、あなたはアルフェールへ向かってください!あそこが落とされては…」

『御意。では、我らはアルフェールへ』

 ご武運を、という言葉を付け加えようとしたが、群青のミスラールの残骸が見えた時、彼はその必要がないということを悟った。

(マーサス・ヴィロンを討つとは…!何と言うお方だ)


 ヴァルナスの大部隊は、行く手を阻むものを倒しながら、戦場を通り過ぎていく。それは壮観な光景であるが、しかし他のウェルギスの戦士たちに、それを見送る余裕などあるはずもない。目の前の、後ろの、横の、とにかく自分に近づく敵たちに目を向けることで、精一杯だ。一瞬の隙はあれど、あくまで一瞬でしかないのだから。そしてそれはもちろん、アラステアも同様だ。

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