第21話

 ピスはヘルムインに、ヴァルナスたちの到着を伝えた。

「ヴァルナス。もう少し敵を押し返したら、退却だ。共に殿しんがりを頼む」

『お言葉ですが、殿下。援軍はおそらく、ナシリア配下かと…』

「それは分かっている。だが兵や馬、アルコーンの動きがどうも鈍い。戦法も数に頼りすぎている」

「それに、大砲と銃も慎重だ」

『敵も追撃の余裕がない、と?』

「それも作戦かもしれないがな。だがギュレアから不休で急行した可能性もあると考えている」

「敵が何を考えてるにしろ、我らの押し返しも限度だ。補給と休息は必至」

『分かりました。それでは共に!』

「ああ。ウェリオンの栄光を我らに!」

 ヘルムインとヴァルナスの部隊は、迫りくる敵軍に向かっていった。


 草原の端に作られた野営地。元は最初の侵攻部隊のものだったが、主たちはもういない。

 野営地の一つのテントに、鎧兜の騎士が帰還した。出迎える部下たちに軽く挨拶をし、騎士は椅子に腰かける。

「アルヴィア将軍、ご無事で」

「無事なものか」

 サーシャ・アルヴィアは兜を外し、頬の切り傷や、額の痣などの顔の傷を見せた。部下たちは急いで塗り薬を持ってこようとしたが、サーシャはそれを止める。

「私の傷より、レクティの修復を」

「まさかレクティが?」

「頭部の水晶をな」

「それはそうとバヒニモ。補給部隊は?」

「あと2日かかると」

「そうか。ナシリア殿下はいつ発たれる?」

「4日とのことです」

「ナシリア様の計画が遂行されるまで、セノティオスの顔も立てねばならんな」

「ウェルギスへの侵攻などどうでもいいが、ソルモールの南下は阻止しなくてはならない」

「マーサス・ヴィロンが死に、ハルド・ハロットが解放されたとなれば、戦況は変わる。がどう敗走するにしろ、プローグとオスティカへの攻撃準備は進めておけ」

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