第22話
ヘルムインの読み通り、敵の追撃はあっさりと終わった。半数以上の部隊が城や城近くの要塞に帰還した。
城内広間の円卓には、国の中枢たちが一堂に会している。国王ケフェネスを筆頭に成年の王族、王国議会議長、各騎士団団長、市民の代表として名家の当主らや国の富豪らもいる。豪勢とはとても言えない料理が、国の窮状を端的に訴えている。
アラステアはヘルムインの隣に座り、ぶどう酒を飲む。
「りんご酒の方が好みだったのでは?」
「好みを言っていられません。それにヘルムインこそ、酒はやめたのではなかったのですか?」
「こういう時です。少しの楽しみは必要ですよ」
ヘルムインはグラスのハシュラームを一気飲みし、一切れだけ用意されていたステーキを、頬張った。
食事がひと段落した頃、国王は本題について語りだした。
「民の食糧はどうなっている?ケミュー」
「小麦をはじめ、麦の貯蔵量が減っています。米とローサス麦は収穫が控えていますが、さすがにカバーしきれないかと」
「…厳しいな。パン自体が作れなくなる。ダッカラが食えなくてはウェルギス人として淋しい」
「今すぐなくなるわけではありませんが、これ以上長期戦になれば…」
「それから他の食料も危うい状況。野菜はまだ何とかなりますが、肉魚、特に家畜の減少が著しい。そもそもグランウェリオンには大きな牧場がありません。山を削るにしても人員も技術も不足。今はほぼ猟師頼みが現状です。しかしそれも、限度がある」
「水は今のところ問題ありませんが、酒は造る原料も場所も人も足らない」
「詳報に感謝する。しからばやはり…」
国王はハロットとジャーダインを見る。2人も国王と目を合わせる。
「エステルト奪還は不可欠かと。すでにエステルト方面で同志が動いております。念には念を入れて、民兵部隊も動かしてあります」
感心の目が、ハロットに注がれる。しかし当のハロットはそれに喜ぶことはなく、淡々と報告を続けた。彼は王都奪還と同時に、敵の補給を断つ作戦も提案したのだった。
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