第20話

 この決闘で初めて、サーレーンの剣が敵に明確な傷を与えた。頭部の水晶に刃が直撃したのだ。

 アルコーンの外部につく水晶は、映像や通信における重要なパーツ。それが壊されれば、当然アルコーン同士の闘いに影響が出る。


 敵は動きが鈍くなった。アラステアが踏んだ通りだ。アラステアは勝負を決めにかかったが、敵はあっさりとその場を去った。

 アラステアはアラステアで、サーレーンが思いのほか傷ついたこと、燃料が減少したことから、追うことはしなかった。


 サーレーンはゆっくりと、近くの味方部隊の援護へ向かう。


 ジャーダインの執務室からは、城内を守る部隊が見える。

 ノックの後、諸々の準備を終えたジャーダインが帰ってきた。ハロットはお茶をカップに入れ、差し出す。

「内通者が来るのなら、最初から申してくれれば」

「あなたを信頼していないわけではないが、機密性が高すぎるので」

 ジャーダインはお茶を啜り、ため息を漏らしてカップを置いた。

「…本当に兵は集まっているのだろうな」

「最低限ですがね。念のため投降のふりをした民兵部隊も動かします。作業用といってアルコーンも付ければ、彼らも喜ぶでしょうな」

「ドウ族は城の救援か?」

「ええ。今頃ソルモールの艦隊を駆逐しているはず」

「だといいが」

 また茶を啜る。

「…モアン執政に気に入られなかったのが悔やまれるな」

「死者の悪口は言いますまい」

 ハロットはお茶を一口飲む。そしてカップを叩きつけるように、テーブルに置いた。

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