第19話

 ジャーダインとハロット、その配下は東の門へと向かった。門の外には、多くの兵士とアルコーンの骸が横たわるが、立っている者も少なくない。

 ジャーダインとハロットらの眼前に立つのは、黒いアーゼイン。そしてその中から出てきたのは、黒髪褐色肌の精悍な青年だった。黒いアーゼインが引き連れる、数体のアルコーンや数頭の馬からも、騎士が降りる。

「カルヤータにクニー、いや皆の者、よく帰った」

 ハロットが笑顔で彼らを出迎える。

「黒いアーゼイン…」

「エカール・ナタウではなかったのか」

 ジャーダインは独り言とも、質問ともとれるように呟く。

「彼は戦死しました。私がアーゼインを受け継いだのです」

「その若さでか」

「皆から羨ましがられましたよ。出世は出来ませんでしたが」

「ヴォヌの血筋だからか?」

「まぁそれもあるでしょう。何にせよ、内通者としてはうまく動けた」


 カルヤータとクニーは、ハロットに跪く。

「ハルド・ハロット閣下。カルヤータ・エンデラ・マシュヌ・シュオ、並びにクニー・ピフレカン、そしてその配下ら、見事帰還しました」

 ジャーダインの部隊は整列し直し、正式な形で、すべての帰還した勇敢なる同志たちを迎え入れた。


「貴公が言っていた、援軍の当ては彼らか?」

「いえ。違います。我らの古き友人たちですよ、ジャーダイン殿」

「まさか、ドウ族か?」

「そうです。ソルモールは『海賊』と呼んでいるが、彼らは勇敢な戦士です」

「やはり貴公は食えぬ男だな」

 ジャーダインは、ハロットと別れ次の作戦の為の戦闘準備に向かった。


 王都エステルト奪還は、万全に万全を重ねなければならないのだから。

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