第24話

 一夜明け、夜戦をしていた部隊がウェルギス城に帰還した。兵士も馬もアルコーンもひどく傷ついている。負傷した兵士も数多く、すぐさま治療班が運んでいく。

「ヨドゥ・ジャント隊長。あなたの武功は称えられるでしょう。あとは私たちに。あなたは傷を癒しなさい」

「これはアラステア様!もったいなきお言葉…」

「これ以上、同胞や同志を失いたくありません。さあ、早く行きなさい」

 ヨドゥは深くお辞儀をしたあと、部下の兵士に付き添われ、治療に向かった。鎧はそうとう傷ついている。弾痕のような傷も見えた。かなり無理をしているのが分かる。

「あなたもですよ、アラステア。あなたはこの国の未来。無鉄砲は兄だけで十分です」

「イフィア…」

「俺がなんだって?イフィア」

 兜を持った鎧姿のヘルムインが、会話に割り込む。

「褒め称えていたところよ」

「いや違うな。また引き合いに出しただろう。どうです、アラステア?」

 ヘルムインはアラステアを見る。アラステアは笑うのをこらえているようだ。

「私はヘルムインほど無茶な人間ではありませんよ」

 ヘルムインは妹に視線を移したが、当の妹は兄を見ていない。

「…ともかく。今日の戦はナシリア軍をトーウェット川まで追い込むこと。頼りにしている、2人とも」

「並んで戦うのは随分久しいですね、ヘルムイン」

「さあ、行きましょう。シフォード・ラウンの部隊がすでに向かったとのこと」

 3人は兜を被り、最低限の装備をし、それぞれのアルコーンに向かった。再び戦場への道を進んで行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る