第15話

 明らかに反応出来ない速度で放たれた剣は、フェルロ製の装甲を容易く切り裂く。アウルム製の切っ先は、通常のアルコーンでは防ぎきれない。フェルロとアウルムでは、それほど強度に、圧倒的な差があるのだ。


 一体、何体ものヘレスとウォーブを『殺した』のか。


 敵兵もそうだ。歩兵、槍兵、弓兵、弩兵、騎馬兵、銃兵、大砲の砲手兵…。


 どれほどの命を二度と帰れない地へと送ったのか、そしていつまで続けなければならないのか…。


 それは、アラステア自身にすらもわからない問いとなっていた。自分の周りには、ただその墓場だけが出来ていく。

 アラステアが、積極的に戦いに赴かなかった理由は、まさにこの光景が答えだ。戦いの先にあるのは、いつもこのむなしい骸たちだけ。光の無い道だけが、そこに出来ていく。そのむなしさが、痛みとなってアラステアの心身を蝕んでいく。


 だが、今はそれを拒んでいる場合ではない。それはアラステア自身がよく知っている。祖国が、侵略者の魔の手に脅かされている。

 それでも、いずれウェルギスという国を治める身にある者として、1人の騎士として、それに背くわけにはいかなかった。

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