光のエリュフィシア

堂壱舎

第1話

 戦争の魔の手は、平和だった小国ウェルギス王国にも伸びていた。

「アラステア様!ソルモール軍が最終防衛ラインを突破しました!」

 慌ただしく報告したのは、ウェルギスの王室騎士団団長ヴァルナス・ニールだった。

「そうですか。もう来たのですか…」

 報告受けたアラステアもまた、焦っていた。何故なら相手はエリュフィシア最大の超大国、ソルモール帝国。圧倒的な軍事力を背景に、エリュフィシア全土を支配せんとしていた。

 アラステアの心には、恐怖心と憤りが混在していた。

「もしや出陣なされるおつもりか…!?」

 ヴァルナスは別の意味で焦った顔をした。アラステアはいずれこの国を治める存在。戦死させるわけにはいかない。

「あなたの、この国を思う気持ちは分かります。しかし、あなたは…」

「ヴァルナス!私の身を案じてくれるのは、ありがたく思います。ですが」

 アラステアは、ひざまずくヴァルナスに歩み寄り、彼の肩に手を置いた。

「ですがこの国が滅んでは、意味がありません!私のサーレーンを出して下さい!」

「…ならば、死は許されませぬぞ」

 アラステアの後ろ姿は、窓から降り注ぐ光の中へと消えていった。

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