13話 赤羽アカネは、ドキドキする
◇赤羽アカネの視点◇
「はぁ……疲れたなぁ」
警察の事情聴取から解放された後。
おばあちゃんから、こってり怒られた。
一般人に『鬼』の相手をさせて、自分は何もしないとは、何事か!?って。
「でも、ソウタくん普通に倒しちゃうし」
ありえないでしょ……あれ。
『鬼化』した人って一般人が10人がかりでも、取り押さえられないってくらいの怪力のはずなのに。
ソウタくんは、一人で簡単に取り押さえてしまった。
危なげなく、冷静に。
「カッコよかったなぁ……ソウタくん」
ぼそっと、呟いて、はっとなった。
な、何言ってるの、私!?
ちなみに、ユキナちゃんはもう居ない。
もとの取り憑き先(?)のソウタくんと一緒に帰って行った。
聞かれたら、やばかった。
いや、むしろ喜ばれただろうか?
一度ソウタくんのことを考えると、公園で抱きしめられた時のことまで思い出してしまった。
細身だけど鍛えている腕。
がっしりしていて、力強かった。
安心して身を預けられるような……って、違う!
何考えてるの、わたし!?
「これ、絶対ユキナちゃんの影響を受けてるよ……」
公園で、私は幽霊のユキナちゃんに
私の身体に、ユキナちゃんの霊体が入ってきた。
あの時、一時的に身体の所有者として私とユキナちゃん、二つの魂が存在していた。
「なにやってんの……退魔の魔法使い見習いなのに……」
こんなのをおばあちゃんに知られたら、怒られるなんてもんじゃない。
下手したら、弟子をクビになっちゃうかも……。
「はぁ……」
大きくため息をつく。
いまだに、心臓の音が大きい。
ソウタくんのことを思い出したからだ。
そして、私の身体に入ったユキナちゃんの魂の残滓が私に訴えてくる。
――渋谷ソウタへの好意を
あー、マズいなぁ……。
時間が経てば消えると思ったんだけど、全然気持ちが落ち着かない。
ずっと高ぶったままだ。
ソウタくんの顔がちらつく。
胸のあたりがもやもやする。
うーん、ダメだなぁ。
こんな時は、派手な魔法でも撃ってスカッとしたい。
ただし、魔法使い見習いの私は勝手に魔法を使えない。
正式な魔法使いである、おばあちゃんの立ち合いが必要だ。
でも今はおばあちゃんが不在。
だから訓練をすることができない。
(そういえば……おばあちゃん、ここ最近ずっと外出してるなぁ)
今日は『鬼』に会ったということで、おばあちゃんが飛んできたけど、またすぐに出かけてしまった。
すでに半分、引退をしている身だけど『緊急事態』になるとおばあちゃんのような凄腕の魔術師は数が少ないため呼び出される。
最近、都内で色々と魔法絡みの事件が多いらしい。
『鬼』の出現も、その一環だろう。
出動してきた警察や一緒にいた魔術士が、「またか……」とぼやいていた。
一体、何が起きてるんだろう?
気になるけど、私のような半人前には教えてもらえない。
時計の針は22時を回っている。
テストが近いから勉強もしなきゃ……だけど。
面倒だなぁ……
今日はもういいかな。
明日やろう、明日。
……前はユキナちゃんと一緒に勉強してたんだけど。
私、友達少ないからなぁ。
その時、スマホから通知音が鳴った。
画面には『メッセージあり』の文字。
差し出し人の名前は『ソウタくん』と表示されていた。
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