19話 赤羽アカネは白状する
◇アカネの視点◇
「アカネ……ユキナが居ることを、知ってたのか?」
ソウタくんが、真剣な顔で私に質問した。
ど、どうしよう……。
ソウタくんは、一般人だ。
幽霊のユキナちゃんの存在を伝える訳にはいかない……んだけど。
「ん? 魔女見習いよ、もしやこれは秘密だったのか?」
「うぅ……」
副店長の
「ま、バレちゃったのはしょーがないんじゃない?」
ユキナちゃんは、ケラケラ笑ってるしー!
どーすればいいのよー!
「紅茶をお持ちしました」
マイペースな店員さんが、私の席に良い香りのするアールグレイを運んできた。
相変わらず早い……。
「……アカネ」
「知ってたよ……」
ソウタくんの悲し気な目に負け、私はついに白状した。
◇
「お、俺の後ろに24時間、ユキナの幽霊が居る……?」
ソウタくんがわなわな震えている。
ショックを受けている。
「わー、賢い猫ちゃん~」
ユキナちゃんは、副店長の黒猫さんに触ろうとして「シャー!」と威嚇されている。
なにこのカオスな状況。
「だ、駄目だよ、ユキナちゃん! 副店長は怒ると怖いんだから!」
「小娘相手に怒ったりはせん……。にしても、随分と陽気な幽霊だな」
私が慌てて止めに入ったが、副店長は寛大だった。
どちらかというと、呆れた表情だった。
「えっと、あとアカネと
ソウタくんが、目をぱちぱちさせながら質問してきた。
……そう、なし崩しに私が魔法使い見習いであることまで知られてしまった。
あー、おばあちゃんにバレたら殺される……。
「そう、悲観するな魔女見習い。どうせ、今日は店長の
「まあ、……そうなんですけど」
本当は、こっそり凄腕の魔法使いである店長さんにユキナちゃんのことを相談するつもりだったんだけど……。
なんか、全部予定が狂ちゃったなぁ。
その時、私の肩をトントンと叩かれた。
「なぁ……アカネ」
すぐ間近に、ソウタくんの顔があった。
ドキッとした。
「な、何かな?」
「俺は……ユキナと会話できないのか?」
「それは……」
必死な様子のソウタくんに、応えてあげたい気持ちはある。
でもそれは……いけないことだ。
生者と死者を結びつけてしまう行為。
退魔の赤羽家としては、許されない。
「わー、私もソウちゃんと話したいー!」
ぐっ、ユキナちゃんは気楽に言ってくれるし。
「別にいいんじゃないのか? その幽霊の子からは邪気を感じない」
「ふ、副店長までっ!?」
なんで悪の道を勧めるのかなぁ!?
「駄目ですよ、副店長。
店員の男の子が、テーブルを拭きながら諫めてくれた。
「ゴメンね、ソウタくん。駄目なんだ」
「そっか……」
私の答えに、しょんぼりとソウタくんは肩を落とした。
う、罪悪感が。
しばらく、無言の時間が続いたが、ソウタくんが気持ちを切り替えるように声を上げた。
「じゃ、試験勉強するか」
「うん」
本来の目的だ。
私は、参考書とノートを開いた。
すぐ隣にソウタくんが座る。
私は試験範囲の復習をしつつ、わからない問題をソウタくんに教えてもらった。
(ソウタくん、教えるの上手いなぁ……)
先生よりわかりやすいかも。
私は問題を解きつつ、ちらっとソウタくんの方をみた。
ソウタくんと目が合った。
わ、私を見てる?
「ど、どうしたの……?」
「…………アカネ」
「なに?」
「この前、俺のことを『ソウちゃん』って呼んだ時……」
げっ!?
「あれって、もしかして……」
「あ、ソウタくん! この問題がわからないんだ、教えて!」
露骨に話題を変えてしまった。
ソウタくんは、苦笑して私に教えてくれた。
隠し事が下手だなぁ……私。
その日は、二時間ほど一緒に勉強をして解散した。
結局、店長は不在のままだった。
私の目論見は、空振りで終わった。
ソウタくんと一緒に途中まで帰ったけど、ユキナちゃんのことを質問されることは無かった。
「今日は、ありがとう。ソウタくん」
「ああ、帰り道に気を付けて。じゃあな、アカネ」
私と別れる直前。
ソウタくんの顔が、妙に明るいことが気になった。
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