第21話 異世界ロケ、放送してもイイですか?(前編)

 セリーヌとフィリップは国王選に向けて、極秘裏にある計画を進めている。

 普段やる気の無い彼女が柳瀬DとAD白崎に協力的になったのは、きっとこの計画に使えると考えたからだろう。


「ってことはもしかして、セリーヌさんも異世界転移が出来るんですか?」


 魔法に興味津々のAD白崎は、目を輝かせながら質問をする。

 セリーヌはそんなバカADに対し、首を左右に振って否定した。


「違う。私自身が異世界に転移することは不可能」

「えっ? じゃあどうやって私たちを元の世界に帰してくれるんですか?」


 AD白崎が首を傾げる。

 その疑問はもっともだ。クラリスのような転移魔法が使えないとなると、一体他にどんな方法があるというのか。


「私は万物を理解し、宇宙の摂理すらも解き明かす唯一の観測者。すなわち、柳瀬殿と白崎殿の世界も観測の範囲内ということ。だからこうする」


 セリーヌはそう長々と答えると、先ほど自分が出て来た扉に手を伸ばして魔法を詠唱し始めた。


「聖なる世界と異なる宇宙、交わらざる異界よここに繋がれ。特級術式456、バックドア」


 直後、扉が眩く発光し、真っ白な光が視界を包んだ。


 しばらくして柳瀬Dが目を開けると、セリーヌは白い髪を整えながら言う。


「私の仕事は終わった。これで柳瀬殿と白崎殿はいつでも世界を行き来することが出来る」

「いや、ちゃんと説明してもらっていいですか?」


 セリーヌが大書庫室に戻ろうとするので、慌てて引き止める。

 相変わらず彼女は言葉が足りない。


「なんか扉がすごいことになってたような……。って、何も変わってないじゃん! どういうことですかセリーヌさん?」

「セリーヌ、しっかりと説明してあげたらどうだ?」


 AD白崎とフィリップからも視線を向けられたセリーヌは、こちらに向き直ると渋々ながら説明を加えた。


「さっきの魔法でこの扉を東京セブンチャンネルの本社と繋げた。ここを通り抜けるだけで身体も環境に適応するようになっている。だから何度でも安全に世界を行き来することが可能。これ以上私から言うことは無い」


 もういいでしょと言わんばかりに、さっと踵を返して足早に立ち去ろうとするセリーヌ。

 しかし、まだ話は終わっていない。本人は気にも留めていない様子だが、今のはなかなかの衝撃発言だ。


「えっと、それはつまり、この扉を開けたら六本木ってことですか?」


 柳瀬Dの問いかけに、セリーヌは立ち止まり首肯する。


「だからずっとそうだと言っている。開ければ分かるはず」

「じゃあ、開けますよ?」


 セリーヌがイライラし始めたので、とりあえず扉を開けてみる。

 するとそこは。


「おお、カメラ倉庫だ……」


 六本木本社の撮影機材が保管されているカメラ倉庫だった。

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