第20話 一旦、局に戻ってもイイですか?(後編)
フィリップからのお願いとはどんなものだろうか。それに、元の世界に戻る話と繋がっているというのも引っかかる。
柳瀬DとAD白崎は話を続けるよう視線で促す。
「うむ。私からお願いしたいのは、次期国王選出会議のサツエイだ。そこでのやり取りを記録してもらい、且つ多くの民に見せてもらいたい」
「国王選の撮影、ですか……」
フィリップの言葉を受け、柳瀬Dはぽつりと呟く。
「もちろんヤナセ君とシラサキさんだけの裁量で決められるものでないことは十分に理解している。責任者に相談した上で判断してくれれば構わないよ」
責任者と相談した上での判断で良い。それならば局に持ち帰って検討することは可能だ。
だが、たとえ国王選の撮影が許可されたとしても問題は残る。
「……分かりました、一応チーフプロデューサーと話し合ってみます。でも、国王選って一週間後ですよね? その直近だと放送枠が空いてないんですけど、時間が空くとまずいですか?」
フィリップからすれば、きっと一刻も早く放送してほしいはずだ。
しかし、今から枠を確保するとなると放送時期はかなり先になる可能性が極めて高い。
柳瀬Dが確認するように問いかけると、フィリップは難しい顔をした。
「うーん、あまり時間が空くのは好ましくないね。出来る限り早くお願いしたいと責任者に伝えてもらえるかな?」
「はい、その辺はもちろん」
「では、よろしく頼むよ」
フィリップは満足そうに一度首を縦に振る。
そして、柳瀬DとAD白崎にとっての最重要問題に話題を移した。
「それで、ヤナセ君とシラサキさんには元の世界に戻る手段についてだが」
やはりクラリスを頼るしかないのだろうか。
そう考えていると、次に出て来たのは予想外の人物の名前だった。
「セリーヌが用意してくれることになった」
「セリーヌさん、ですか?」
なぜ彼女がここで?といった様子でキョトンとするAD白崎。
柳瀬Dも一瞬不思議に思ったが、昨夜のことを思い出しすぐに納得した。
「もしかして、僕たちを国王選に巻き込む提案をしたのってセリーヌさんですか?」
「ああ、その通りだよ。ヤナセ君、よく気が付いたね?」
少し驚いた表情を浮かべて訊き返すフィリップ。
ただ、昨日の夜に本人からそれとなく聞いていたとは言えないため、適当な理由を述べておく。
「こんな突拍子も無い思考をするのはセリーヌさんくらいだと思ったので」
そんな柳瀬Dの出任せな回答に、フィリップは愉快そうに笑った。
「はは、確かにそうかもしれないね。彼女の考え方は常人のそれを超えている。私たちの脳では理解出来ないことも多い」
するとその時、近くの扉が急に開いて中からセリーヌが現れた。
「朝から私の悪口で盛り上がらないでほしい。とても気分が悪い」
「すみませんセリーヌさん。おはようございます」
「おはようセリーヌ。気分を害したのなら悪かった、謝罪しよう」
柳瀬Dとフィリップが軽く謝りつつ挨拶すると、セリーヌは気怠そうにこくりと頷いた。
そして、重たい足取りでこちらに歩み寄ってくると、姿勢を正して口を開く。
「柳瀬殿、白崎殿。二人にはこれから重大な任務を課す。その遂行を円滑にするため、私は手助けすることを誓う」
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