第32話 次の国王に、就任してもらってイイですか?(後編)
《この女優さん誰? 可愛いしめっちゃ演技上手い》
《7チャンでやってるのってドラマだよな? 妙にリアルなんだが》
《これ初見の人、深夜にやってたやつも見た方がいいと思う。不思議な雰囲気で面白いから》
《クラリスが国王になるんか!》
AD白崎のスマホに表示されたSNSのタイムラインでは、番組に関する投稿がどんどんと流れていく。
しかし、AD白崎自身はそれをチェックすることも忘れて、目の前で繰り広げられる白熱した議論に聞き入っていた。
「ブノワ様が脱落した今、次期国王候補はリシャール様、アンリ様、クラリス氏の三名に絞られました。これはもうリシャール様で決まりではないですか?」
「一番多くの推薦を受けていますし、まあ妥当でしょうな」
「もうさっさと投票に移らないか?」
次の国王はリシャールで決まったも同然と、投票に移るよう申し立てる参加者たち。
だが、それをフィリップが止める。
「盛り上がっているところ悪いが、決選投票の前にまだやるべきことがある」
「どうせ何をしたところで結果は変わらないだろう」
煩わしいといった表情を浮かべつつも、「やるならやればいい」とリシャールが言う。
「ふむ、ならばこちらで勝手に進めさせてもらうよ。今回の国王選は東京セブンチャンネルによってサツエイされているのは周知の通りだが、その目的は多くの民に見てもらうことだけではない。参加してもらうことにあるのだ」
視聴者に参加してもらう?
どういうことかとセリーヌに視線を向ける柳瀬DとAD白崎。
すると、彼女は魔法の杖を大きく振りながら口を開いた。
「今からデータ放送機能を使い視聴者投票をする。リシャールなら青、アンリなら赤、クラリスなら緑」
直後、放送画面では連動データ放送が立ち上がり、投票ボタンと得票数グラフが表示される。
「いやいや、そんなことするって聞いてませんけど」
「これ、越谷さん怒りませんかね?」
公共の電波で広く発信している以上、現場の判断であまり勝手にやりすぎるのは良くない。
不安を感じる二人をよそに、セリーヌは投票受付を開始してしまう。
「さて、これでこそ民主的な公平な国王選と言うものだ。この結果を考慮した上で、我々代表者による決選投票に移ろうじゃないか」
フィリップの言葉に、参加者から反論が出ることはなかった。いや、正確には何も言えなかっただろう。
もしここで自分達だけで強行採決を行い次期国王を選んでしまったなら、国民の反感を買うのは確実だからだ。
「全く、フィリップも悪知恵がよく働く。ここまで視聴者が異世界の人間とは一言も言っていない。バレても知らないよ」
そう突き放すように呟いたセリーヌだったが、その顔はどこか楽しげだ。
《青:リシャール 2388票》
《赤:アンリ 835票》
《緑:クラリス 13409票》
数分後、集計結果が発表された。結果はクラリスの圧勝。
まあ、ずっと彼女を中心に番組を構成していたのだから当然ではあるが。
「では、これら民の声を踏まえた上で決選投票だ。最後に立候補者の意気込みでも聞いておこうか」
「僕こそがこの国を治めるに相応しい」
「我は全ての民に幸福な生活を送ってほしい。ただそれだけです」
「私には、意気込みなんて言えるほどのものはありません。でも、もし国王になれたなら、その時はみんなのために、命懸けで頑張ります」
リシャール、アンリ、クラリス。
三人の言葉を聞き終えると、国王選はいよいよ運命の決選投票へと移った。
そしてその結果、見事クラリスが次期国王に選出されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます