第11話 社会的立場を獲得しよう
唐突な学校見学に疑問を覚える、あたしとカーちゃんをよそに、校内にある『理事長室』なる場所へと案内される。
「それでは、これから生徒達の休み時間が始まりやすので、校内の案内は授業が始まってからにさせて頂きやす。また後程、お迎えにあがりやす」
そうして、この
「要望通りの内装ですわね」
扉から向かって、一番奥には事務用にしては高級感あふれる椅子に、漆の塗ってあるテーブルがある。手前には、客人用と思われるガラステーブルと、これまた座り心地の良さそうなソファがあった。
「自由にくつろいでくれて構いませんわよ。ここもワタクシの部屋みたいなものですので」
「くひょろげ、ひゃないわよ。まっひゃく。ひゃにがひゃんだか(訳:くつろげ、じゃないわよ、まったく。何が何だか)」
「ひょれひしへも、ひゅごひへやひゃのう(訳:それにしても、すごい部屋じゃのう)」
「悪態着く割には、めっちゃくつろいでいるじゃないですの……。客人用のお菓子まで勝手に……」
甘い物があるとつい手が伸びてしまう、だって女の子だもんね。しょうがないわよ、うんうん。
「というか、あれよさっきのガチムチの男――歳三さん、だったっけ? 警戒しすぎて疲れたのよ、見ため、超怖いし」
「百花はビビりなのか、気が強いのか、時々わからなくなりますわ。こういうのが情緒不安定とでも言うんでしょうね」
「だれが、情緒不安定よっ。あたしを貶す暇があったら、この状況の説明をしなさい。あたしは、蚊帳の外で話がとんとこ進むのが一番嫌いなのよ」
「えぇ。長い付き合いですし、わかっておりますわ」
アシュリーは、再びポケットからスキットルを取り出し、身体に悪い例の飲み物を煽り、ほっと一息つく。
「まず、この霞島高校を寄付金という名目で買収したのはきちんと目的があってのことですわ」
「ほうほう、目的じゃと」
「ええ、この世界では、ワタクシ達は非常にアウェーな存在ですわ。前の世界と共通で、社会的な立場というのはやはり大事にされている雰囲気があるということが、ネットを通じで察しがつきましたの」
「それはそうかもしれないけど、なんで高校を買収するのに繋がるのよ。だいたい、買収のためのお金はどこから――」
「お金については問題ないですの。買収に掛かった費用は、ネットで色々やっている内に稼いだものですわ」
「なんと、この世界でもう稼ぎを得ていたとは……流石アシュリーじゃ」
「どうということは無いですわ」とアシュリーは 唐突な学校見学に疑問を覚える、あたしとカーちゃんをよそに、校内にある『理事長室』なる場所へと案内される。
「それでは、これから生徒達の休み時間が始まりやすので、校内の案内は授業が始まってからにさせて頂きやす。また後程、お迎えにあがりやす」
そうして、この
「要望通りの内装ですわね」
扉から向かって、一番奥には事務用にしては高級感あふれる椅子に、漆の塗ってあるテーブルがある。手前には、客人用と思われるガラステーブルと、これまた座り心地の良さそうなソファがあった。
「自由にくつろいでくれて構いませんわよ。ここもワタクシの部屋みたいなものですので」
「くひょろげ、ひゃないわよ。まっひゃく。ひゃにがひゃんだか(訳:くつろげ、じゃないわよ、まったく。何が何だか)」
「ひょれひしへも、ひゅごひへやひゃのう(訳:それにしても、すごい部屋じゃのう)」
「悪態着く割には、めっちゃくつろいでいるじゃないですの……。客人用のお菓子まで勝手に……」
甘い物があるとつい手が伸びてしまう、だって女の子だもんね。しょうがないわよ、うんうん。
「というか、あれよさっきのガチムチの男――歳三さん、だったっけ? 警戒しすぎて疲れたのよ、見ため、超怖いし」
「百花はビビりなのか、気が強いのか、時々わからなくなりますわ。こういうのが情緒不安定とでも言うんでしょうね」
「だれが、情緒不安定よっ。あたしを貶す暇があったら、この状況の説明をしなさい。あたしは、蚊帳の外で話がとんとこ進むのが一番嫌いなのよ」
「えぇ。長い付き合いですし、わかっておりますわ」
アシュリーは、再びポケットからスキットルを取り出し、身体に悪い例の飲み物を煽り、ほっと一息つく。
「まず、この霞島高校を寄付金という名目で買収したのはきちんと目的があってのことですわ」
「ほうほう、目的じゃと」
「ええ、この世界では、ワタクシ達は非常にアウェーな存在ですわ。前の世界と共通で、社会的な立場というのはやはり大事にされている雰囲気があるということが、ネットを通じで察しがつきましたの」
「それはそうかもしれないけど、なんで高校を買収するのに繋がるのよ。だいたい、買収のためのお金はどこから――」
「お金については問題ないですの。買収に掛かった費用は、ネットで色々やっている内に稼いだものですわ」
「なんと、この世界でもう稼ぎを得ていたとは……流石アシュリーじゃ」
「どうということは無いですわ」とアシュリーはかぶりを振る。
「この世界の社会的価値というのは、どうやら学歴――ようは、学校に通っていたかどうかというのも大きな指標になるみたいですの」
「えーと、前の世界で言うところの、剣術学院に通っていたかどうかで周りからの評価が変わる、みたいなこと?」
「その通りですわ。この世界では、その節が特に顕著ですの。といっても、身元がはっきりしていない、ワタクシ達のような人はそもそも学校に入るのすら一苦労ですの。そこで、それなら、そういう審査をする側の人間になってしまえば手っ取り早そう、と考えたんですの」
「な、なるほど……」
と、呟いてはみる。確かに、言ってることはわかるし、理事長になろうと思うに当たっての諸々についても理解できたわ。だけど、よくもまあ、こっちの世界に来て3か月ちょっとなのに、それだけの事まで頭が巡るわね……。ぶっちゃけ、引くレベルよ……。
「とりあえず、あれじゃの。アシュリーは頭が良いんじゃのっ」
カーちゃんはまるで話について来れていない様子。うん、あたしも頭の回転数低めな方だし、かなり難しかったもの。
「ありがとうですわ、ミリアちゃん。……さて、説明が終わったところで、提案がありますの」
「ほう、なんじゃ?」
「ミリアちゃんは、この世界で強くなりたい。目標が欲しいんですわよね」
「ふむう。そのとおりじゃ」
「でしたら、この霞島高校に通ってみませんこと?」
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