第25話:ポーション

 ポーション瓶がたっくさん出来たし、薬草も十分!

 なら作るしかないでしょうポーションを!


「ポーションを作るのに必要な素材って、なんだろう? ケミーさぁ──うっ」


 ケミーさんが笑顔を向けてくれてるけど、その顔……さっき錬成陣を買う時の顔とそっくり。


「ポーションレシピは2000ENです」

「うっ……ちょ、ちょっと考えさせてください」

「アイテム鑑定があれば、レシピは手持ちのポーションを見れば分かるのですけれど。アイテム鑑定スキルの価格は一万ENですしねぇ」


 アイテム鑑定!

 その手があったんだった。

 手持ちのポーションはキャラクターを作った時に貰った『初心者用ポーション』がある。

 紅葉ちゃんに少し分けてあげたアレ。

 取り出して鑑定すると、



【初心者用ポーション】

 最初に配布されるポーション。

 製薬、錬成不可能。

 物量:3



 ……だって。うそぉ……。

 でもレシピを買う余裕はないし……。

 あ、ポーション一本あれば鑑定でレシピが分かるんだし、だったらお店で一本買えばいいよね!


「ケミーさん、ありがとうございました~。ラプトルさん行こっ」

『あぎゃ』


 さて、どこで買おうかなぁ。

 ギルドを出て少し行くと、生産ギルドの施設のある通りに。

 そうだ。薬師さんも製薬でポーションが作れるんだよね。誰か売ってたりしないかなぁ。


 建物の一階が作業台とかのある階だったはず。

 行ってみるとさっくさんの人が、何か作業をしていた。

 錬金術師ギルドと違って、こっちは賑やかだよね。


『フンフンッ。あぎゃ』

「どうしたの、ラプトルさん」


 何かの匂いを見つけたラプトルさんは、ドッドッドッドと走っていく。追いかけていくと、ラプトルさんはお鍋をかき混ぜている人の前で止まっていた。


「ひ……ひぃっ」

「はわわわっ。だ、大丈夫です。その子、わたしのホムさんだから食べたりしませんっ」

『あぎゃー』

「ちょ、ちょっと離して。怖いから離してっ」


 ラプトルさん、可愛いのになぁ。

 言葉が分かったのか、しゅんっとしたラプトルさんがとぼとぼとわたしの背中に隠れる。

 撫でてやると喉を鳴らして嬉しそうに鼻を擦りつけてきた。

 ふふ、可愛い。


 でもラプトルさん、どうしてこの人のところに?

 この鍋の中にラプトルさんが好きなモノでも入ってるのかなぁ。

 ラプトルさんを怖いといった女の人は、鍋をぐーるぐるかき混ぜていた。


 邪魔しちゃ悪いかなと思って、少し離れてみていると──。

 一分ほどかき混ぜて出来たものを、おたまで慎重に瓶によ沿っていた。

 あれって……ポーション瓶!?


 周りで作業している人を見ると、わたしも持ってる薬草を水で洗ったし、ザルに入れて窓際の日当たりの良いところに置いてみたり。

 ポーションだ。やっぱりあれポーション作ってるんだ!

 そっかぁ、あんな風にしてポーション作るんだぁ。

 手間暇かけて作るんだね。大変そう。


 窓の所に置いてるのは、乾燥なのかなぁ。

 見ている間にも、洗ったばかりの薬草がどんどんくしゃってなってるけど。その辺りはさすがゲームね。

 でも乾燥が終わるまで、数分かかってるみたい。

 ポーション作るのに、全部でどのくらいの時間かかるんだろう?


 乾燥させている間に別の作業をしてるみたいだけど、あれだとポーション作り以外何も出来なさそう。


「そうだ。薬草の乾燥……錬成で出来ないのかな?」

『んぎゃぉ?』

「やってみようか?」

『あぎゃっ』


 うんうんと頷くラプトルさん。よし、やってみよう!


「あ、あのー。お水って使ってもいいんですか?」

「え? 別にお金なんか取られないわよ」

「ありがとうございますっ」


 薬草を一枚取り出して水洗いっと。それから空いてる台の上に錬成陣用紙を広げて、濡れた薬草を置く。

 向こうの窓の所に干してあるのを見本にして、あのぐらい乾燥させればいいんだね。


「レッツ『錬成』っ」

「え? あなた錬金術師な──えぇ!?」

「できた~。上手く乾燥できてるのかなぁ?」

「ちょ、ちょっと見せて──」


 さっきの女の人が乾燥できたかもな薬草を手に持って「アイテム鑑定」と。

 あ、それも使えるのね。


「乾燥できてる……うそ。錬金術で乾燥できるなんて知らなかった」

「わたしも今知りました」

「今!? た、試したってこと?」

「はい」


 この乾燥した薬草を、どうやらたくさんのお水と一緒に沸かしてるみたい。

 乾燥薬草と錬成して、ポーション作れるかなぁ。

 うん、なんでも試してみなきゃわからないよね。


 作ったポーション瓶と、お水……お水は置けないから、瓶の中に最初から入れておこうっと。

 瓶に溢れるほどお水が入ったはずなのに、何故か七分目のところまでしかお水がない。それに水が入ると勝手に蓋が出来た。

 凄い。この蓋、どこから出てきたんだろう。


 錬成陣にそれを乗せて、乾燥した葉っぱも置いて……レッツ『錬成』!


「ほえっ。でろーんってなっちゃった。ど、どうして?」

「あなた、薬草の枚数が合ってないのよ」

「え? 一枚じゃダメ?」

「製薬で作る低品質のポーションは二枚よ」


 二枚かぁ。じゃあ次はそれでやってみよう。

 もう一度、今度は二枚の薬草を乾燥させ、水の入った瓶も用意。

 それを錬成すると──今度は完成!


【低品質の下級ライフポーションのレシピをゲットしました】


「出来た……初めてのポーションが出来たぁ!」

「ぷっ。初々しいわね、おめでとう」

「ありがとうございますっ」

「ところであなた。薬草の錬成って、今見てたら二枚同時にやってたけど」

「はい」


 女の人は笑顔のまま、手元にあった大きなザルにたっくさんの薬草を乗せて──


「乾燥、お願いできない?」


 と、わたしに手を合わせた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る