第7話:共闘
お花摘み楽しかったぁ。
あのお花畑って、モンスターも出ないんだね。
次のお仕事は──お花畑の奥にある森の中で『化け切り株』から『木片』集め。数は二十本。
それと赤いキノコと黄色いキノコと、それぞれ十五本ずつ。
これが終わればお仕事六つ終わり!
ケミーさんのメモには「森の奥はアクティブモンスターがいるから気を付けてね」って書いてあった。
ケミーさん優しいなぁ。
ところでアクティブモンスターってなんだろう?
情報サイトで見たことのある単語だけど、説明はなかったもんなぁ。
まぁ奥のほうに行かないようにしようっと。
森の中に入ってさっそく切り株のお化け発見!
でも思っていたのより凄く細い。幹の太さ20センチぐらい?
「これだけ細いなら、きっと弱いよね。えいっ」
革リボンでぴしっ。
ん、んんー?
戦闘状態になるとモンスターの上に出てくるHPバーは、5分の1ぐらいが減った程度。
か、硬い!?
やあ、スライムさんと全然違うよぉ。
近づかれる前になんとか──でも三回攻撃したところで接近されちゃったぁ。
『ブァッ』
「きゃっ──いったぁーい」
切り株から生えた二本の細い枝を振り回して攻撃してくるなんてぇ。
むぅ、結構痛いんだからぁっ。
「てぃや! えいっ」
リボンでピシピシというより、もう持ち手でごすごす殴る感じでやっと倒せた一匹目。
カッコーンと音を立てて、化け切り株が光になって消える。
その光の中から木片が一つ落ちた。
ふぅ。一本目ゲットっと。
あ、キノコだ!
ケミーさんの話だとこの森には赤と黄色のキノコしかなくって、見つけたキノコは全部依頼の物だから安心してって言ってた。
よし、採っておこうっと。
キノコの数が揃う頃、木片も二十本集まった~。
よぉし、七つ目のお仕事は──
「くっ。多すぎるでござるっ」
ん?
今の声、誰だろう。
あっちの茂みの向こう側から聞こえてきたけど、他のプレイヤーさんかなぁ。
「きゃっ」
悲鳴!?
も、もしかしてピンチかもっ。
草を掻き分け茂みに入っていくと、なんとなく見覚えのある子が……。
あ、さっき町でぶつかった子だ。あの黒猫耳とながーい尻尾は、間違いない!
戦っているのは五匹の小さなトカゲと、一匹の少しだけ大きいトカゲ。
あぁ、あの子のHP、半分以下になってる!
ど、どうしよう。
──助けてやろうか?
その時、わんちゃんさんの声が聞こえた気がした。
そうだ。助けてあげよう。
ううん。私じゃ助けられないかもしれない。でも──
「お、お手伝いしましょうか!?」
そう。私も一緒に戦うことはできるはず!
「か、かたじけないでござる。お、お願いします」
わたしの方を見る余裕すらないみたい。急がなきゃっ。
小さいトカゲからまずは攻撃!
「ふぇっ。か、硬い!」
「リ、リボン? そ、そんな武器があったのでござるか?」
「あ、これ鞭なの。錬成で形を変えて、使い慣れたリボンにしたんだけどね」
やっとの思いでわたしが一匹を倒す間に、ござるさんは二匹を倒し終えていて。
でもHPが凄くピンチ!
あの大きなトカゲさんの攻撃が危ないみたい。
「そ、そうだ! ス、スキル使おうっ」
スキルを使うには、声に出して言えばいいんだよね?
「"巻き付け"! えぇーいっ」
シュルルルルっと飛んで行ったリボンが、大きいほうのトカゲに巻き付いた!
「やった! 成功──ふえぇっ」
『カカカカカカッ』
ぐいっと引っ張られて、ずべぇーっとこけてしまった。
「だ、大丈夫でござるか!? く、ポーションさえあればっ」
「わ、わたしは大丈夫っ。それよりも小さい子を先に倒しちゃってっ」
ござるさん、ポーションが無いのね。
わたしのポーションを分けて上げられればいいんだけど……取り出せないかな。
態勢を変えて腹筋の姿勢でトカゲさんと力比べ。
これじゃあアイテムボックスの操作なんて出来ないよぉ。
「ポーション、わたし、いっぱい持ってるのっ。でも、このままだと取り出せないぃ」
「ポーションを出すでござるのか? なら『ポーション・アップ』と唱えるでござる。そしたら手元に出てくるでござるから、蓋を指で弾くでござ──」
「『ポーション・アップ』。で、出た? ござるさん、これ飲んでぇ」
「え、えぇ!?」
「は、早くぅ。わたし、そろそろ限界ぃ」
なんかさっきからトカゲさんの頭の上にゲージが出てるのっ。
たぶんこれ、巻き付け出来る残り時間だと思うーっ。
「か、かたじけないでござる! 頂戴っ」
ピンって何かが割れるような音がして、それから──
小さいトカゲさんの悲鳴が聞こえた後、ふわっとござるさんが現れて……。
それと同時に巻き付け時間終了っ。
「ふわっ」
「大丈夫でござるか!?」
「う、うん。平気っ。よぉし、二人で頑張って倒そう!」
「承知っ」
ちょっと時間が掛っちゃったけど、なんとか大きなトカゲさんも倒すことが出来た。
キラキラ輝く光からコロンと落ちたのは、大きな鉤爪と小手みたいな手袋?
「わっわっ。レ、レアドロップでござるか!?」
「え? 珍しいの?」
こくこくと頷いたござるさんは、それを手に取って──そして消えた。
すぐに人差し指をつつーってやって……あ、他の人のインターフェースって見えないんだ。
「レアだった?」
ござるさんがこくりと頷く。
「やったーっ。おめでとう、ござるさん」
「え、で、でも。これはお主と一緒に──」
「え? ござるさんのだよ。だってトカゲさんと先に戦ってたのはござるさんなんだし」
「し、しかし……し、職業はなんでござるか?」
「ん。錬金術師だけど」
「そうでござるか……錬金術師では装備できない籠手でござるな」
じゃあござるさんの物ってことでけってーい!
「ぐっ。されど……されど某!」
「わたしね! 初めて知らない人と一緒に戦ったの! 凄く楽しかった。手伝わせてくれて、ありがとうっ」
レアアイテムをくれるようなモンスターだったんだ。
他のトカゲさんより少し大きかったし、ボスだったのかなぁ。
はぁ、面白かったぁ。
ござるさんは何か考え事をしているようだけど、籠手のことはいいのに。
だってわたしには装備できないんだから、必要ないもん。
だから気にしないでって言おうとしたんだけど。
がばっと顔を上げたござるさんは、
「ならば某! 命を救って頂いた礼、この命を持ってお返しするでござる!!」
「え……」
「某、今日この時より
・ ・ ・ ・ ・ ・。
「ほええぇぇっ!?」
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