第16話:新発見

「ふあぁ~。靴出なかったねぇ」

「ねぇ~……こほんっ。まぁそう簡単には出ないでござるよ。だけど素材はいっぱい集まったでござる」


 草原ラット──ラットというからネズミっぽいのかと思ったら、毛がふわもこでどちらかというとモルモット?

 だからドロップするアイテムも『草原ラットの柔毛』。それに革も。

 草原ラビもやっぱりふわもこな毛がたくさん取れたし、ラビの頭に生えていた角もゲットできた。


「素材があれば製造依頼も出来るでござる」

「あ、じゃあじゃあ、ロックんさんに頼もうよ」

「……うぅ……気は進まないでござるが、主殿を誑かした者を調査するいい機会でござるな」


 ちょ、調査って……。ロックんさんはいい人なのになぁ。


「じゃあ町に戻るでござるか」

「うん──あ、待って。やりたいことがあるのっ」

「やりたいこと?」


 ロックんさんから教えて貰った、スキルの習得の仕方。

 薬草をゲットするための『採取』スキルは、お金で買わずとも習得できる方法があるんだって。

 それをやりたいの!


 すぐに習得できないかもだけど、その辺は運次第なんだって。


 草原なんかで草をじーっと見て、色と形の違う草が時々生えてるの。それを摘んでいると、低確率でスキルを習得できる。


「あのね、草の色や形の違うものがあって、それを摘みたいの」

「ほぉ。錬成の材料でござるか?」

「うん。まぁそうなる、かな」


 摘んだ草は一応薬草になるみたい。

 低品質のライフ草って書いてあって、名前からしてあんまり回復量はなさそう。


「某もお手伝いするでござるよ」

「あ……うん、じゃあ出来たポーションは、紅葉ちゃんに上げるね」

「おぉ! それは助かるでござる。じゃんじゃん見つめるでござるよぉ」

「あはは。でもこの方法で見つけた薬草で作ったポーションは、回復量が少ないんだって。それにわたし錬金術師だから、更に二割減なの」


 何も言わず紅葉ちゃんは草を掻き分け、見つけたそれを摘み取っていた。

 私も頑張ろう。


 あ、発見!

 ヨモギの葉っぱみたいだなぁ。

 プチんっと葉っぱを摘み取ると──ぽーんっと音がして


【スキル『採取』を習得しました】


 というメッセージが浮かんだ。


「ほええぇぇぇっ!?」






 さ、採取スキル手に入れちゃった。しかも一枚目で!

 ま、まぁ確率だもんね。そんなこともあるよ。


「主殿は採取スキルを持っていたでござるか」

「う、うん。実は、ね」


 ロックんさんには、他の人にはスキルの習得方法を教えちゃあダメって言われたの。

 スキルの習得条件は、それだけで財産になる。例え店売りの物でも、お金を出さずに手に入れられるものは貴重だからって。

 紅葉ちゃんにはお話したかったけど、ここは耐えて「持っていた」ことにした。


「では某は主殿の周辺敬警護をしているでござるよ。採取はそちらに任せるでござる」

「うん。頑張って集めるね」


 スキルを手に入れてからヨモギっぽいのを摘むと、採れる葉っぱが二枚になった!

 スキルがあると倍になるのかぁ。

 でもヨモギがそもそも少ないんだよね。


 30分かけて四十八枚。回数にして二十四回かぁ。

 1分で一株も見つかってないってことになるぅ。

 はぁ、もっといっぱい見つかればいいのに……あ、あった。


 ──ぽーん。

【スキルの獲得条件をクリアし、『発見』を習得しました】


「……ほええぇぇぇぇっ!?」

「ど、どどどどうしたでござるか主殿!?」


 シュババババって走って来た紅葉ちゃんが、心配してわたしの顔を覗き込む。


「ご、ごめんね紅葉ちゃん。そ、そのね」


 このスキル、ロックんさんから教えて貰ってないヤツだぁ。

 ごにょごにょと紅葉ちゃんに教えると、彼女もビックリ!


「あ、主殿。そ、それは新は──いやいや、ここで口にするべきではござらぬな。よし、町へ戻るでござるよ」

「う、うん」

「ふっふっふ。主殿を誑かした男に、高く売りつけるのもいいでござるなぁ」


 なんか紅葉ちゃん、悪代官みたいぃ。


 フレンド画面からロックんさんを見ると、生産工房っていう所にいるみたい。

 たぶんさっき会ったところかなぁ。

 通信機で連絡をすると──


『製造依頼? うん、いいよ。こっちも一着良いのが出来たんだ。錬成頼める?』

「はい、やります!」

『じゃあ俺の部屋……あ、女の子と二人っきりはマズいか』

「お友達も一緒です」

『オケ。じゃあ部屋で待ってるよ』


 ということで、町の中にある生産工房にやってきましたー!

 三階の……あれ?

 どこの部屋だっけ?


「主殿、向こうで手を振っている男がいるでござるよ」

「あ、ロックんさぁーん」

「やぁチョコ・ミントちゃん。もしかして部屋の場所覚えてないかもと思って、待ってたんだけど」

「ナイスですロックんさん! 分からなくなってました!」


 ロックんさんは、うんうんと言いながら頷いた。

 凄いなぁ、ちょこっとお話したぐらいなのにわたしのこと分かってくれてるぅ。


「その子がお友達かい? よろしく、俺はロックん。革職人と裁縫職人、あと木工職人をやっているよ」

「紅葉ちゃん、この人がね──紅葉ちゃん?」


 ロックんさんが変な人じゃないかと警戒していた紅葉ちゃんだけど……固まってる。

 どうしたんだろう?


「あ、あああ、主ドノォ」

「ど、どうしたの紅葉ちゃん。声が裏返ってるよ?」

「主殿、こ、この方とお知り合いになったのでござるか!?」

「う、うん。そうだけど……紅葉ちゃんの知ってる人だったの?」


 紅葉ちゃんは勢いよく、首を左右に振る。

 そしてロックんさんはにこにこ笑顔。


「主殿。こ、このロックんって方は、生産系情報サイトでも有名な、生産TOPランカーのひとりでござるよ!」

「ほえええぇっ。生産TOPランカー!? って、何?」

「そこからぁーっ!」

「あっはっは。いやぁ、チョコ・ミントちゃんは面白いねぇ」

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