第11話:ホムンクルス
「ケミーさぁん」
「チョコ・ミントさん、いらっしゃい」
錬金術師ギルドには、やっぱりわたししかいない。
試しに、わたしがいない間に錬金術師さんが他にも来たか尋ねると──
「いましたよ!」
「ほ、本当ですか!」
「はい! ひとり!!」
ケミーさん……顔は笑ってるけど、目の横にきらりと光るものがあるんですけど。
うぅん。錬金術師って、そんなに人気ないのかなぁ。
「それで、錬成の練習をされますか?」
「あ、はいっ。砂と貝で何を錬成するんですか?」
尋ねている間にケミーさんは、カウンターの上に錬成陣用紙1枚と砂、それと──白い粉?
「この粉はチョコ・ミントさんに拾って来てもらった貝です。それを熱して細かく砕いた物なんですよ」
「ほえぇ」
「石灰っていうんです」
「石灰! え、石灰って貝殻から作るんだぁ」
運動場に引く白い線のあれだよね?
ほえぇ、知らなかったぁ。
「他の作り方もありますが、これが一番簡単なのですよ。ではこの二つを使って──これをイメージして錬成してくれさい」
「小瓶?」
オシャレな香水の入れ物みたい。でもこれ、蓋がないような?
「あの、この小瓶って蓋がありませんけど」
「中身を入れる前に蓋はしないでしょう?」
「あ、そうか」
「ちなみにこれはポーション瓶です。販売もされていますが砂と貝から作れば、あとは錬成陣用紙代しか必要ありませんから」
おぉ!
お金の節約ってことですねっ。
見本をじーっと見つめ、しっかりイメージ出来るようになったら、
「レッツ『錬成』!」
ちょっとの砂と、ちょっとの石灰。
出来上がった小瓶は、形は見本と同じ。
だけどわたしオリジナルに少しだけアレンジしちゃった。
「葉っぱの模様、ですか?」
「はいっ。ミント印ってことで。えへ」
「素晴らしいと思います。とても可愛らしいですね」
「ありがとうございます!」
分量は砂と石灰、1:1にしなきゃならないんだって。もし同じにしなかったら──
「失敗します。どろ~んですよ」
「ぶ、物量って大事なんですね」
「左様でございます。それでは残りの砂と、石灰をお渡しいたしますね。それぞれ10ありますので、お役立てください」
「ありがとうございます、ケミーさん」
【ポーション瓶のレシピをゲットしました】
ほえ?
レシピ?
「あの、ケミーさん。レシピって──」
「はい。何かを錬成するには、それに必要な素材とそれぞれの物量とがあります。何がいくつ必要か。それらをメモした物がレシピですよ」
「レシピがないと、錬成できないんですか?」
「いいえ。そんなことはりません。現に今、チョコ・ミントさんはレシピ無しで錬成したでしょう?」
確かにその通り。
じゃあどうしてレシピをゲットしましたって出たんだろう。
「まぁ先ほどは私が材料を用意したので、正しい物量だったけれど。レシピがあれば正しい素材も数も分かります。どろ~んとなることもありませんから」
「なるほど。失敗しないためのレシピなんですね」
「そういうことです。今後はギルドでレシピの販売も始まりますし、チョコ・ミントさんが見つけた錬成レシピがあれば情報の買取も致しますよ」
「わっ。それ楽しそう」
「ふふ。楽しんでいただけると、私たちも嬉しいです。さ、最後はホムンクルスですよ」
そ、そうだわ。ホムンクルスのこと、聞かなきゃ。
でもこれはケミーさんが教えてくれる訳じゃないみたい。
「二階に錬金術師アルがいます。飛行タイプのホムンクルスを連れた男性職員です。彼からホムンクルスの錬成についてお尋ねください」
「はいっ。じゃあ行ってきます」
ケミーさんに手を振って二階へ。
飛行タイプってことは……鳥さんかなぁ?
あ、大きな鳥さんを頭に載せた人発見!
お、重たくないのかなぁ。
「あ、あのぉ。アルさんですか?」
「ん。君がチョコ・ミントさんだね。ケミーから話は聞いているよ」
いつの間に!?
え、だって私、ケミーさんに言われて真っ直ぐここに来たのにぃ。
「君はホムンクルスを錬成したいのかい?」
「はいっ。錬成したいというか、ホムンクルスと一緒に遊びたいです!」
「──一緒に遊ぶか……いいね。じゃあ講義を始めよう」
「お願いしますっ」
するとアルさんはだぼついたコートのポケットから、オレンジ色のボールみたいなものを取り出した。
わぁ、ぽぉって光ってる。なんとなく点滅しているような?
まるで……
「鼓動みたい」
「そう。これはエンブリオ。ホムンクルスの心臓となる、核だ」
「し、心臓なんですか!?」
こくりと頷いて笑うアルさんは、頭の上に載せた鳥さんのお腹をもふもふした。
いいなぁ……わたしももふりたいぃ。
「ではホムンクルスについて説明しよう。ホムンクルスにはアタッカータイプと遠距離アタッカータイプ。そしてヒーラー兼バッファーと3タイプが存在する」
「ふむふむ」
アタッカーは職業で言うと、剣士、シーフ、格闘家に該当。
遠距離アタッカーは弓を使うアーチャーや、魔術師。
ヒーラー兼バッファーが神官。
そういう考え方でいいんだって。
「錬成には物量が重要になる。サイズは大きく分けて、大中小だ」
「ほえぇ」
「錬成に必要なのはこのエンブリオと、ホムンクルスの外見を形成するための素材だ。骨、肉は必須」
「ほ、骨とお肉ですかー!?」
「最初からホムンクルスのイメージがあるなら、それに合った素材を探してくることだ。あとは君の想像力次第。あー、あとDEXだな」
今96+5なんだけど、足りるかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます