第12話

 ホムンクルスの大きさは、小が物量30。中は50。大は80なんだって。


「ただしホムンクルスは途中で進化することもある。そうなると体のサイズも大きくなるけどね。まぁ錬成するわけじゃないから関係ないけどさ」

「ほえぇっ。進化するんですか!」

「あぁ。ホムンクルスとの親密度や、あとは経験にもよるけどね」


 あぁん、早くホムンクルスと一緒に冒険したいぃ。

 そのためにも素材を集めなきゃ。

 さっき紅葉ちゃんと一緒に狩りをして集めたアイテムは取っておかないと。

 わたしひとりで使っちゃうわけにもいかないもんね。紅葉ちゃんと半分こしなきゃ。


「素材を今から集めるなら一ついいことを教えてあげよう」

「ほえ? いいことですか?」


 アルさんは笑って鳥さんを頭から降ろして抱っこした。


「この子はね、進化を果たして成長した子なんだ」

『くわっー』

「ふわもこで可愛いですねぇ」

「強そうだろう?」

「可愛いです」

「強そうだろう?」

「可愛いと思いますよ?」

「強そうだろう?」

「うっ……」


 アルさん、ずっと同じ顔なんですけど。

 もしかして「そうですね」って言うまでこれ続くのかなぁ。


「か、可愛いと……」

「強そうだろう?」


 やっぱりだぁ。


「そ、そうですね。はは……」

「でもこの子を錬成するときに使った素材はね、この町の周辺で手に入る物ばかりなんだよ」


 この周辺で……うぅん、アルさんの言っている意味がよく分からないよぉ。


「ははは。つまりね、強そうなモンスターを倒して得た素材じゃなくても、経験を積むことで強いホムンクルスになるってことだ」

「あ、なるほどぉ。強いホムンクルスを産みたいなら、強そうなモンスターから取れる素材をって思っちゃいますもんね」

「その通り。だけど弱いモンスターから取れた素材でも、変わらない強さを得られるから安心して。むしろ早くからホムンクルスを伴って冒険をするほうが、たくさんの経験を積ませてあげられるからね」

「じゃあ早く素材を集めてこなきゃ……」

「ちなみにエンブリオは僕が販売しているけど、一つ1000ENだよ」


 そう言ってアルさんは今までで一番の笑顔をわたしに向けました。






 お仕事報酬のお給料はちょうと3000EN。紅葉ちゃんが手伝ってくれたし、お礼しないと。

 そうだ、紅葉ちゃんがシーフギルドで受けたお仕事のお手伝いをしよう!


「紅葉ちゃんがログインするのは9時だったからぁ……今の時間が──」


 インターフェースの画面右上にデジタル時計があるのを、紅葉ちゃんに教えて貰ったの。

 

「この時計は現実世界の時間だから……うぅん、まだ8:10だぁ。あと50分……ううん、こっちだとその三倍だから、150分!」


 二時間以上あるよぉ。


 デジタル時計に下にゲーム内の時間を示すのがあるんだけど、こっちは時間じゃなくって分度器上を太陽のアイコンが移動しているの。

 真ん中に[12]って数字だけあるから、ここがお昼だとしたら──


「今は10時過ぎかなぁ。2時間ぐらい時間を潰さなきゃ。あ、そうだっ」


 砂と貝──か、貝はちょっと難しいけど、砂だけでも集めておこうっと。


 町の東側だったよね。

 商業地区を抜けて町の中心を通って──わぁ、この辺って人がいっぱい。

 鎧とか武器とか持ってる人多いから、あれみーんなプレイヤーの人なのかなぁ。

 でもなんか、剣持ってる人、弓を持っている人、杖を持っている人で、それぞれ似たような服がいっぱい。


「──募集~」

「前衛タンク、いませんかー?」

「弓、パーティーください」


 近づくうちに、いろんな声が聞こえてきた。

 ここ……もしかしてパーティー募集をする場所なの!?


 わぁ、わぁっ。ゲームって、こうやってお友達を作るんだぁ。


 ──ざわざわ


 ん?

 な、なんだろう。凄く注目を集めてる気がする。


「ねぇ、あなた」

「ほえ、わ、わたし?」


 わっ。女の子ばっかりのグループだ。パーティーなのかなぁ。


「そのアバター、とっても可愛いわね」

「あ、ありがとうっ」


 そ、そうか。錬成装備はわたしだけのオリジナル装備だから、珍しくて注目を浴びてたんだぁ。


「どこで手に入るの? あ、私たち今、魔術師募集してるの。あなた魔術師よね?」

「え、あ、あの……」

「これからぁ、東の森に行ってレベル上げするんですよぉ。一緒にどうですかぁ?」


 さ、誘われちゃった!

 でもでもわたし……。


「あの、わたし魔術師じゃなくって錬金術師なんですけど、に、二時間ぐらいなら一緒に──」

「はぁ? 錬金術師ぃ?」

「あーダメダメ。錬金術師はダメ。パーティーで一番いらない子だもん」

「……え」

「ごめんねー。パーティーの件は無しで。あ、でもそのアバターがどこで手に入るか、教えてくれないかなー」

「魔術師さーん。募集中でーす」


 錬金術師だとダメって、どうしてなんだろう。


「ねぇ、聞いてる? アバターどこで手に入るのかって聞いてるんだけど」

「れ、錬成です。自分で錬成して作ったんです」

「へぇ。あ、じゃあ私の装備も可愛くしてくれる?」

「あ、あのっ。どうして錬金術師はいらない子なんですか?」


 わたしがそう尋ねると、この女の子たちは一瞬真顔になって……それから笑いだした。


「え? もしかして錬金術師のこと知らないでその職業選んだの?」

「えぇー、ありえなーい。普通はプレイ前に下調べするでしょ?」

「悪いことはいいませんからぁ、キャラデリして作り直すことをお勧めしますよぉ」

「錬金術師は攻撃スキルが今のところゼロなのよね。重装備できるわけでもないから、防御力も低いし」


 攻撃力は低く、防御力も低い。だからいらない子。

 この子たちはそう言って笑っている。


 笑うほど、面白いことなのかな。


「そんな地雷職で遊んでても、楽しくないでしょ? キャラデリしようよ。あ、そんで魔術師になったら? そしたら一緒に固定パーティー組みましょ。ね?」


 どうして、楽しくないって決めつけるんだろう。

 わたし──


「わたし、錬金術師が楽しくて仕方ないもん! あなたたちみたいに職業で楽しいか楽しくないか決めつけるようなプレイの仕方、したくありません!」


 この子たちの装備は、ぜーったい錬成してあげないんだから!

 ふんっふんっふんっとその場をずんずん歩いて行って、東の川を目指す。

 紅葉ちゃんが来るまで真面目に砂集めしようっと。


 パーティー広場を抜けたところで、一度振り返る。

 錬金術師は不遇職だってケミーさんも言っていたけど、そういうのって誰が決めたんだろう。

 

 でも──わたしは楽しんでる。

 わたしはわたしの楽しみ方で遊べばいいよね。

 うん。楽しんだもの勝ちだよ!


「よし! 砂集め頑張るぞぉーっ」

「お、ポジティブでいいねぇ、君」

「ほえ?」


 歩き出そうとしたとき、横から声がした。

 とても綺麗な声の持ち主さんは、チャイナドレスを着た綺麗なお姉さん。

 うぅん、でもどこかに違和感があるんだけど……あ、チャイナドレスなのに、ズボンを穿いてるんだ。それで違和感があったのね。


「あ、あのぉ」

「錬成上手なお嬢ちゃんに、ちょっと頼みごとがあるんだけど、いいかな?」







【WSFO】雑談スレ41


751名前:通りすがりの冒険者

 魔法少女たんを取り囲む悪役令嬢


752名前:通りすがりの冒険者

 それみたww

 しかもあの悪役令嬢たちそうとう顔作りこんでるだろw


753名前:通りすがりの冒険者

 あーなんか顔がおかしいと思ったのはそれか

 このゲームってバイザーのカメラ機能で撮影した姿を読み込んで

 システムが自動補正してくれんだよな

 その自動補正が一番まともに見えるってのに必要以上に弄ると

 かえって不自然になるっていう


754名前:通りすがりの冒険者

 鼻筋シュっとしすぎ鼻小さすぎ唇ぷるんっとしすぎで

 マネキンみたくてきめえw


755名前:通りすがりの冒険者

 錬金術師は確かにパーティーにくんなとは思う

 あ

 魔法少女たんは別な


 けどあんなオープンではさすがに言えんわ

 女ってこえーな


756名前:通りすがりの冒険者

 俺真剣にこのゲーム楽しもうと思った


757名前:通りすがりの冒険者

 自分はもともと来るもの拒まずのスタイルで遊んでる

 パーティー誘おうとしたけど先客がいて諦めたんだよね


758名前:通りすがりの冒険者

 >>754

 そのマネキン集団に男マジが凸ったら

「男は下心ありそうでキモいから」ってお断りしてたぞw

 その面でキモいとか言ってんだww


759名前:通りすがりの冒険者

 草すぎて大草原wwwww


760名前:通りすがりの冒険者

 >>757

 チャイナドレスの女だろ?

 あれ確かクローズドβ組の先行者じゃね


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