第2話:先輩プレイヤー
「うわぁ、すっごーい! これがVRMMOなんだぁ」
両手を広げくるくると回ってから、そのままお花畑へとダイブ!
んん~、お花の匂いも分かるよぉ。
こっちの花も、あっちの花も、それも、あれも、ぜーんぶっ。
「同じ匂いだぁ……」
なんだか一気に『これはゲームだ』って認識させられた気分。
うん、ゲームなんだけどね。
さて、初めの町に向かおうっと。
問題は──
「町ってどこにあるんだろう?」
ってこと。
立ち上がって辺りをぐるーっと見渡すと、あ、丘の向こうに何か見える!
小さな丘に向かって駆けていくと、その向こうに目指すべき場所が。
「町、はっけーんっ!」
ビシィっと指を差すと、どこかららくすくすと笑う声が。
ほ、ほえぇっ。
そうだよこれ、ひとり用のRPGじゃないんだった。他の人もいるってこと、すっかり忘れてたぁ。
恥ずかしいっ。
もう、早く町に行こうっと。
てってけてーっと走ってお花畑を抜けると、町までの間は草原みたいな感じに。
わぁー、結構人がたくさんいるー。
ほとんどの人はモンスターと戦ってるみたい。
ふむふむ。この辺はスライムさんが出るんだねぇ──ってぼーっと見ていたら、わたしの目の前にもスライムさんが!
よ、よぉし。わたしだって戦っちゃいぞーっ。
「あ、あれ? 武器がない。ど、どこ?」
貰ったはずだよね?
え、もしかして選択するだけだったの?
あたふたしている間にスライムさんを蹴飛ばしちゃった!?
『ぷるるんっ』
「ほえぇっ、ごめんなさあぁーい!」
慌てて後ろに下がったんだけど、怒ったスライムさんが追いかけて来る!
謝っても許して貰えないよぉ。
くるりと回れ右して逃げ出したけど、背中にどんって衝撃があってそのまま転倒。
そんなわたしの上に、容赦なくスライムさんがのしかかって来た。
そしてびょんびょん跳ねる。
「うえぇぇん。このままじゃあ潰されちゃうよぉ」
「いや、潰れはしないだろ」
「ほえ?」
見つめる草の上に影が下りて、顔を上げるとそこにはわんちゃんがいた。
「わんちゃん?」
「……わおーん」
わんちゃん、どこか寂しそう。
飼い主さんと逸れて──
「ほえぇ!? わ、わんちゃんが喋ってるぅっ」
「犬じゃないからな、俺。種族選択でランダム選んだら、こうなっただけだから。それよか助けてやろうか?」
「ほえっ。お、お願いします!」
「わふ」
わんちゃんは、パンチ一発でスライムさんを空の彼方へ飛ばしてくれた。
す、凄いこのわんちゃん!
めちゃくちゃ強い!!
「あ、ありがとうございますっ」
「ん。始めたばっかりみたいだな」
「は、はいっ。さっき始めたばかりの、月宮──」
「待った待った。君、それ本名だろう?」
わんちゃんが慌ててわたしの口を閉じた。
はっ、そうだった。ここではわたし、月宮 茜じゃないんだった。
「す、すみません。わたし、チョコ・ミントって言います」
「うん。知ってる」
「ほえぇ!?」
「あー、君はVRMMOも初めてか」
何故それを!?
「わっわっ。画面が出てきました!」
わんちゃんにインターフェースっていう画面の出したかを教えて貰った。
「システム」──と言いながら、右でも左でもいいので、人差し指で宙をつつーっと滑らせると、その幅に合ったホログラムディスプレイが浮かぶのぉ。
「その画面の下の方に、巾着袋のアイコンがあるだろ? それがアイテムボックスだ」
「あ、あった。触っていいんですか?」
「ん。一度触るだけだと、アイコンの説明が出るだろ?」
ほんとだ。吹きだしが出てきて、『アイテムボックス:各種アイテムが入っている』って書いてある。
隣には男トイレのマークみたいなのが。これ何かなぁ?
あ、ステータスなのね。
今はアイテムアイテムっと。
「わっ、枠がいっぱいですね」
「タブになってるから、装備って書かれてるタブ開いてごらん」
「はーい。あ、鞭あったーっ」
「む、鞭!? 君、鞭を選んだのか?」
「はいっ。短剣でスライムさんぶすーってしたら、ぶにゅってして……気持ち悪かったんです」
「そ、そうか……。アイコンを2回トントンと叩けば、装備出来るぞ。他にも──」
装備アイテム一覧を出すと、左側に3D表示されたわたしがいる。
そのわたしにドラッグ&ドロップで装備を重ねても装着できるとわんちゃんは教えてくれた。
「インターフェースを経由しなくても『アイテムボックス』と言いながら、人差し指をすぅーってやっても出てくるからな」
「はい、ありがとうございます」
「他の画面も、アイコンクリックで出てくる名前を口にしながら、指すぅーで出てくるぞ」
「おぉぉ! わんちゃんさんはVRMMOのプロですね!」
「プ、プロォ!? い、いや……あ、仲間に呼ばれたから、俺もう行かなきゃ。装備、しっかりするんだぞっ。あとステータスやスキル画面のチェックもな。スキルはセットしないと使えないし、レベルも上がらないからな。じゃっ」
わんちゃんさんは慌てて町とは別の方角に走り出した。
一度くるりと振り返って、「楽しめよぉーっ」って手を振ってくれた。
「もちろんです! ありがとうございますー、わんちゃんさぁーん」
わんちゃんさん、今度は振り向かなかったけど、尻尾を振ってくれた。
ふふ。可愛い。
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