第30話:錬金って・・・
「ちょ。ミントちゃん、そのポーション!?」
「はい。錬成したんです」
お店を開く前に、ヴェルさんにこれが売れるかどうか見て貰おうと出したんだけど……。
「錬成って……回復量が錬成ポーションと違うじゃないっ」
「え、えぇーっと……」
そう言えばこれ、普通に錬成したポーションと回復量が違うんだった。
名前も低品質じゃなくって、中品質だし。
「あ、新しいレシピがあって……」
「レシピ? はぁ、誰かが見つけたのかぁ。なるほど。値段次第で錬金術師の需要も少し上がるだろうね」
「本当ですか! い、いくらで売ろうかなぁ」
そうよ。売るってことは値段を決めなきゃ。
でも値段ってどうやって決めればいいんだろう?
「は、販売価格って、どうやって決めればいいんでしょう?」
「ん。そりゃあコストから考えて、赤字にならない値段だけど。それより回復量の劣る店売りポーションは30ENだよ」
「じゃあそれよりは高いってことですよね?」
「そうなるね。ちなみに店売りと錬成で作る低品質のは、回復量が同じなんだ」
低品質が30ENかぁ。
コストは……
薬草を粉にするのに錬成陣一枚。
貝を石灰にするのに錬成陣一枚
ポーション瓶にするのに錬成陣一枚。
ポーションにするのに錬成陣一枚。
でもこれ全部、何十個分を一枚で作れるから、実質1EN以下なんだよねぇ。
水はタダで貰ってるし、薬草も自分で摘んでるし、瓶の材料も自分で……あ、ラプトルさんや紅葉ちゃんにも手伝って貰ったんだっけ。
「使った素材のNPCへの販売価格を見て、それと錬成陣代の全部足した金額に少し上乗せぐらいかね」
「なるほどぉ。NPCさんかぁ」
「あっちに買取商人がいるよ。持ってるならそれを買取に出してごらん。価格だけ見たらキャンセルすればいい」
「の、残ってるかなぁ……あはは、全部錬成しちゃってる」
「ラプトルさんは持ってないのかい?」
「え?」
ラプトル……さん?
『あぎゃ?』
「低品質の薬草が一枚5EN。砂と貝は2ENずつでした」
『んぎゃぎゃー』
ラプトルさんのステータス画面の右下に、鞄の絵が描かれたアイコンがあったの。
まさかラプトルさんまでアイテムボックスを持っていたなんて……。
わたしのは八枠×十段で、タブ一つにつき八十種類のアイテムが持てる。それが『収集品タブ』『装備タブ』『素材タブ』『消耗品タブ』に分かれてるの。
ラプトルさんの場合は『消耗品タブ』が無くって、更に八枠×五段しかない。
それでもアイテムを持てるって、すっごい助かるぅ。
そこに入っていた薬草や貝、砂を買取に出して、値段を見たらキャンセル。
「素材代は14EN。錬成陣は1EN以下だし……15ENにちょっと足すぐらいかぁ」
「は? いや、錬成陣代は10ENじゃない? 十枚100ENで売ってるでしょ」
「はい。ケミーさんから買うとそうですね」
「そうですねって……え、もっと安く仕入れる方法があるのかい?」
「え?」
「え?」
そんな方法あるの!?
ううん。ヴェルさんは錬成陣代は10ENって言ってた。
もしかして何か一つ錬成するのに、紙を一枚使うって計算なのかな?
「ヴェルさん。わたし、ポーション瓶を砂と石灰から錬成するとき、錬成陣に乗せれるだけ素材を乗せて作ったんです」
「乗せれるだけ? え、一本分ずつじゃないのかい?」
「試しに作った時は一本ですけど。貝を石灰にするときも、五十個乗せました」
「……もしかしてポーションの錬成も?」
うんうん。
最初の一本目は確認のために、素材も一本分で錬成したけど。次からは水の入ったポーション瓶を並べられるだけ並べて、その本数の倍の粉を上に乗せて錬成したもん。
一回の錬成で三十本同時に出来ちゃうんだよね。
あれ、もしかしてヴェルさん知らなかったのかな?
でもヴェルさんは錬金術師じゃないし、知らなくても仕方ないよね。
「私もクローズドベータでは錬金術師をやってたんだけど……まさか一度の錬成で複数同時に出来るとは思わなかった」
「え……ヴェルさん、錬金術師だったんですか?」
「格闘家がクローズドベータのテストじゃ未実装だったからね。今でも錬金術師は、一度の錬成で一つずつしか出来ないと思っているはずだ。複数を錬成出来るって言う情報が出てないからね」
誰も……知らない?
「貝を石灰にするのだって、貝一個から一個の石灰に錬成陣一枚と思っているからね。瓶を錬成するだけ赤字になるから誰も錬成しないんだよ」
「ほえぇ。錬成陣一枚で五十個の貝と石灰に出来ちゃいますよぉ」
「そうなると……錬金術師に光が見えるかもね」
今まで店売り価格で販売すると赤字になるポーションの錬成が、大量錬成で赤字から黒字になることに。
それが知れ渡れば、錬金術師産のポーションの価格を店売りより下げて販売すれば──
「錬成産ポーションの需要も出てくるだろうね」
「そうなったら錬金術師さんが増えますよね!」
「まぁ……それはそれでどうかなーとは思うけれど。でもミントちゃん、逆に考えることもできるよ」
「逆?」
「誰にもこのことは内緒にして、自分だけの情報にすれば──君だけが暫くの間、錬成で荒稼ぎもできる」
わ、わたしだけが……お金持ちになれる!?
「君が大量の錬成品を売りに出していれば、そのうち気づくのも出てくるだろうけど。それまではミントちゃんだけが大量の錬成品を作って、売って、稼げることが出来る」
わたしだけの秘密にするってこと?
レシピの件はギルドでレシピが販売されるから、誰でも手に入れられる内容になった。
じゃあこのこともギルドに……。
「わ、わたし、ギルドに情報を売りますっ。そして他の錬金術師さんにも知って貰いたいです」
「ま、ミントちゃんがそうしたいなら、それでいいと思うよ」
「えぇ!? か、買取って貰えないんですかぁ?」
「スキルとレシピ以外の情報は買取れません」
何度頼んでも、ケミーさんはそれしか答えてくれない。
「システムとしてレシピ以外の情報は買取らないことになっているんだろうね。どうやっても無理そうだよ」
「そんなぁ……どうしよう……」
ギルドに売って、他の錬金術師さんにも知って貰いたかったのに……。
じゃあ……じゃあどうやって他の人に知って貰えばいいの?
「あれ? 魔法少女ちゃん、装備が変わった?」
「ほえ……あ」
さっき蛇口の場所を教えてくれた錬金術師さんだ。
教えてくれ……そうだ!
「あのっ。聞いてくださいっ」
「え? え?」
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