第18話:NINJA

「さすが女の子だねぇ。俺だとこんな可愛いの作れないよ」

「美少女ゲーマーの男なら、余裕でござろうけどな」

「……ぁー、そう、かもねぇ。あ、これが二人の装備だよ。チョコ・ミントちゃんのは手袋にDEX補正、ショートブーツはAGI補正にしたよ」


 紅葉ちゃんのは膝下のロングブーツ。防御力は私のショートブーツより高いし、AGI補正も上。


「ありがとうございます、ロックんさん」

「余った素材は手数料として貰って欲しいでござるよ」

「うん、そうだね。わたしのも貰ってくださいっ」

「いやいや、錬成依頼をしたんだし、チャラにしようよ。それにまだ上下の装備も必要だろ?」


 確かに必要だけど……じゃあもっといっぱい集めよう! 

 それで服の製造をお願いして、余ったのはロックんさんに貰ってもらおう。


「あ、主殿。さっきの新発見のこと」

「新はっけ──あ!」

「ん? どうしたんだい」


 首を傾げるロックんさんに、『発見』っていうスキルを習得したことを話した。

 わたしもスキルの詳細を確認していなかったので見てみると『効率良く素材を見つけることが出来るスキル』って書いてた。


「発見か。俺も持ってるけど、NPCに手ほどきを受けて習得したスキルなんだよね。どういう状況で習得したんだい?」

「普通に薬草を探していた時です」

「採取スキルは?」

「その時にはもう持ってました」

「そっか……うぅん。それだけじゃあ何も分からないなぁ。でもNPC以外からも習得できる手段があるってことだね。その情報は今の所出ていないから、一階の生産ギルドの受付に話すといいよ。情報料をくれるから」


 お金をくれるの!?

 う、嬉しい!


「さっそく行ってきますっ。紅葉ちゃん、行こうっ」

「うむ。行くでござるよ」

「いってら。素材溜まったらまたおいで」

「「は~い」」






「なるほど。発見スキルを開眼されたのですね」

「か、かいがん?」

「しかし詳しい条件が分かりませんので……情報料は5000ENしかお支払いできませんね」


 ご、ごせんえん!?

 エンブリオが五個も買えちゃう!?


 はっ。ダメダメ。紅葉ちゃんと半分こしなきゃ。

 わたしひとりだったら習得できなかったかもしれないんだし。


「ありがとうございます。5000ENで十分ですっ」

「では5000EN、確かにお支払いしました」


 生産ギルドの受付のお姉さんは、片眼鏡がオシャレな人。

 お金は受け取ってないんだけど、チャリーンって音だけは聞こえた。たぶんアイテムボックスに表示されているお金の所に、自動的に追加されたんだろうな。

 そういえばお金ってどうやって取り出すんだろう?


「紅葉ちゃん、お金の出し方って分かる?」

「取り出す?」

「うん、そう。今のお金ね、紅葉ちゃんに半分渡したいの」

「ぅえ!? な、なな何故でござるかっ」


 だって紅葉ちゃんが一緒にいてくれたから、習得できたかもしれないんだもん。

 っていうと、紅葉ちゃんが首をぶんぶんと左右に振るの。


「それは絶対ないでござる。そんな特定人物が傍にいることが前提なんて、有り得ない──でござるよね?」


 と、紅葉ちゃんは片眼鏡のお姉さんを見る。

 お姉さんがずれた眼鏡を直す仕草をして「あたりまえです」と。


「ほらみるでござる。某はそのお金を貰う権利はござらぬ。それよりも主殿。お願いがござるよ!」

「え、な、なに?」


 がしっとわたしの手を掴んだ紅葉ちゃんは、頬を赤らめていた。

 すぅーっと深呼吸をする彼女。

 それから瞳を閉じて、意を決して告白をした。


「忍装束を錬成して欲しいでござる!!」


 しのびしょうぞく?


「主殿、間違えてはいかんでござるよ。くノ一の忍者服ではなく、男物の忍者服でござる」

「え? 男物なの?」


 紅葉ちゃんはうんうんと頷き、くノ一の衣装は嫌だって言うの。

 くノ一の服、可愛いと思うんだけどなぁ。

 でも理由を聞くとちょっと納得。しかもどこかで聞いたような理由だった。


「くノ一の衣装は、露出が高いでござる! 女を武器にお色気の術などで敵を翻弄するから、仕方ないのでござろうが」

「お、お色気かぁ」


 紅葉ちゃんはわたしと年齢は変わらないと思う。

 中学生か、高校生か。そのぐらいの年齢だろうなぁっと。

 黒猫獣人さんの紅葉ちゃんはとっても可愛いけど、お色気……ではないかなぁ。わたしもだけど。はは。


「某、リアルでもパンツ派なのでござるよ。だからシーフの装備は嫌いではないのでござるが、ど、どうせなら……忍装束を着てみたいのでござる」

「ふふ、そっかぁ。うん、分かった。でもイメージが浮かばないなぁ」

「あ、ゲーム内でネットを開けるでござるよ」


 えぇー!?

 ゲームしながらネットにも繋げられるの!?


「ただし連続で15分でござるよ。もちろん、ゲーム内時間の」


 ってことは、現実でいう5分ってことね。

 インターフェースにある『システム』っていうノートパソコンのようなアイコン。これをクリックして、新しく出てきた項目から『webサイトを開く』を選べば、パソコン画面が開く。

 そこから先の操作は現実と一緒。

 だけど開けるページには限りがあって、検索サイトで単語を打ち込んで出てきたリンク先は開けなかった。

 画像のみで選択すると一覧は見れるんだけど、個別にサイトを開こうとするとダメ。

 容量の問題みたい。


 忍装束で検索して、今紅葉ちゃんが着ている装備の色合いと近い物を探す。

 いいのを見つけたら、それをじぃーって見て記憶!


「よしっ。じゃあ紅葉ちゃん、その装備貸して」

「おぉ! 分かったでござる」


 あっ、ここで脱いだら、他の人に見られちゃう!


 と思ったんだけど、服の見た目が一瞬で変わった。さっきまで着ていた物は、紅葉ちゃんの手に。


「どうしたでござるか、主殿?」

「ううん。なんでもないの。なんでも」


 そっか。別の服に着替えればいいだけだったんだね。

 わ、わたしも錬成用に予備の服を持ってようっと。


「ではでは、レッツ『錬成』!」

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