第24話:イメージの変化

 貝が二百個になったから、砂も同じだけ集めて町へ戻った。

 この貝、どうやって石灰にするんだろう?


「ラプトルさん、錬金術師ギルドに行こうっ」

『んぎゃ』


 たたたっと走り始めた瞬間──ぽーんっと音が鳴って、


【スキル『走り込み』を習得しました】


「え? な、なに今の。え?」

『んぎゃ?』


 走り込み……野球部スキル!?


「え? なに、恐竜?」

「モンスター襲撃イベントとか?」


 そんな声が聞こえてハっとなる。ラプトルさんを見て、驚いてる人がいるんだ。

 早くギルドに行こうっと。


 走り出したわたしは、なんとなく少しだけ早く走れるようになった気が……する。

 さっきのスキルと関係があるのかなぁ?


 ギルドに到着して中に入ると──うん、今日も誰もいない。

 どうしてそんなに不人気なのぉーっ。


「ケミーさぁ~ん」

「いらっしゃいませ。こちらは錬金術師ギルドでございます」


 あー、うん。NPCさんモードのケミーさんだぁ。


「あのぉ、ケミーさん。貝を石灰にする方法を知りたいんですけど……」


 ちょっとだけ間があってケミーさんが、


「錬成で出来るんですよ」


 ──と。


「錬成は、そこにあるものの形を自在に変化させたり、融合させて新たな形にする。それが錬成です」

「はい」

「その変化は時に時間をも変えることが出来るのですよ」


 時間……タイムスリップ!?


「ちなみにタイムスリップではありませんからね」


 先手を打たれちゃった!?






 錬成陣を敷きます。

 他にプレイヤーのいない錬金術師ギルドの床は、錬成陣も敷き放題です。もちろんやらないけど。


「貝を置いて」

「一個ですか?」

「──たくさん置きたいの?」

「置きたいっていうか、紙は大きいし、もっとたくさん載せられますよね?」


 錬成陣用紙は1メートル四方の正方形。そこに丸い円とちょっとの模様があって、貝なんて何十個も置けそうなサイズなの。

 

「何個ぐらい置けるかなぁ。置いてみてもいいですか?」

「ふふ、どうぞ」


 一個二個と置いて行って、こんもり山積みにしたら──


「ごぉー……じゅっこ! 五十個乗せられましたっ」

「たくさん乗りましたねぇ。じゃあ両手を乗せて、イメージしてください」

「はいっ」


 う、手を置くスペースの事考えてなかった。でもなんとかギリギリ置けるかな。


「イメージはこうです。貝を網の上で焼いているイメージをしてください」

「は、はい」


 網……網の上……サザエとかを網の上で焼いて、おしょうゆ垂らすと美味しそうだよねぇ。


「貝の中身のことは忘れましょうね」

「ほえぇ!? ど、どうしてバレたんですかっ」

「だいたい最初は食べる方をご想像する方が多いので」


 うぅぅ。貝だけ。貝殻だけ。


「焼いて水分を飛ばした貝は、叩けば簡単に砕けます」

「ふむふむ」

「最後に白い粉末になったものをイメージすれば、完成です」

「ふむふむ。つまりイメージの中でも貝を変化させていくんですね」

「その通りです。なかなか難しいので、失敗も覚悟してくださいね」


 し、失敗すると、貝がでろ~んってなるのかなぁ。ちょっと気持ち悪いかも。

 失敗しないよう、頑張ろう!


「いっきま~っす。レッツ『錬成』っ」

『んっぎゃ』


 ラプトルさんも応援してくれてるもん。大丈夫大丈夫。

 貝を網の上で燃やして──カラッカラになったら砕いて白い粉に!


 ピカっと光った錬成陣と五十個は──山盛りの白い粉に!


「やった~。成功しましたよケミーさん」

「おめでとうございます。よかったですね」

「はいっ。じゃあ砂と合わせて──は流石にもう乗せられないか」


 新しい錬成陣用紙に砂を二十個乗せ……こんもりした貝の粉はどうすればいいんだろう?


「粉は掴んで錬成陣に乗せれば、それが物量1になりますよ」

「え、そうなんですか?」


 試しに出来立てほやほやの粉を掴むと、ほんのちょっぴりしか掴めず。もっとたくさんと思って手を広げても、途中でずさーって零れちゃう。

 これ、物量1分しか掴めなくなってるんだね。

 じゃあ砂と同じ20を乗せてっと。


 ポーション瓶のイメージはまだ頭にすっと出てこないから、この前作ったのを見本に出して──レッツ『錬成』っと。

 瓶四十本完成っと。


 残りの石灰も砂と合わせて瓶に錬成し、これで百本。

 更に貝を石灰に。できたものと砂を混ぜてポーション瓶と繰り返して、この前の残りも合わせると合計四百十本のポーション瓶になりました!


「うん。錬成陣なくなっちゃった……」

「十枚100ENですよ」


 にっこり笑うケミーさん。

 安い!


「じ、じゃあ五十枚ください!」

「毎度ありがとうございます」




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