第27話 買い物デート 1

 二学期が始まって一週間が過ぎた。小野鬼さんも学校やクラスに馴染んできた。自分から女子のグループに入ったりもしているのが時々見られる。


 学校案内をした次の日の朝は大変だった・・・ということはなかった。クラスの男子の数人が俺たちの後をつけて来ていたらしく、何もなかったことが明らかにされたからだ。尾行していたことはどうかと思うが、変に問題にされるよりはましな方かもしれない。


 幸いなことにそいつらはこの町の人間らしく、駅方面に向かっていた俺たちの後はつけていなかったらしい。もしつけられていたらと思うと冷や汗をかいてしまいそうになる。


「ようやく明日だね」


 いつもより雲が多い天気だが、今日も俺たちは屋上に来ていた。純恋はとてもうれしそうに言ってくる。


 明日は土曜日、彼女と買い物に行くと先週約束した日だ。


「どこまで行く?」


「そうだな・・・やっぱりショッピングモールが妥当な気がする。純恋がいつもどこで服を買っているのかわからないけど、あそこなら似合う服の一着や二着ぐらいはあるだろうし」


 あまり服には興味がある方ではないのでどこにどんな服屋があるのか俺にはわからない。もしかしたらこの付近にも服の専門店はあるだろうけど。


 そこまで考えた後ふと疑問に思った。


「そういえば京都に行ったんだよね?」


「うん、行ってきたけどそれがどうかしたの?」


「あっちの方がブランドの服が多いんじゃない?向こうでは何か買ったの?」


 俺が聞くと彼女は首を振った。


「おばあちゃん家、京都は京都でも田舎の方だから。服屋とか見て回るほどの店はないんだ」


「そんなに奥なの?」


「うん。小さいころは山に登ったり川に入ったりするのが好きだったけど、この齢になるとさすがにね。田んぼばっかりで何にもない場所だよ」


「そうなんだ」


 どうしてもこういった建物ばかりの場所に住んでいると田舎は少しあこがれてしまう。空気がおいしいとか、自然豊かでのどかとか。


「それで明日は・・・クシュン!」


 彼女は口もとを手で覆いながらくしゃみをした。


「大丈夫?」


「うん、大丈夫くしゃみが出ただけだから」


「気を付けた方がいいよ、今年はどうやら夏風邪が流行っているみたいだから」


 ニュ―スによると今年は去年よりも暑く、クーラーを使っている部屋とそうでない部屋の温度差が激しいところが多いらしい。クラスの方もクーラーをガンガンに使っている。しかし今日は曇っているので外にいてもそれほど熱いとは感じない。どちらかというと肌寒い方だ。だから二人で寄り添って腰を下ろしている。右側だけ彼女の温もりを感じる。


「うん、気を付ける。それで明日はいつも通り車内で会う?」


「そうしようか。一回駅を降りるのもあれだし。それとも各自で現地集合する?」


「ううん、少しでも早く会いたいから車内でいい」


「わかった。明日9時25分の電車に乗るから純恋はその七分後の電車に乗って来て。前から二番目の車内にいるから」


「わかった」


 話がまとまるとタイミングを見計らったようにチャイムが鳴る。


「教室戻ろうか」


「うん」


 俺たちは地面に置いていた弁当箱を手に取ると各自の教室に戻った。


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